警察庁は7日、今年上半期の「サイバー空間をめぐる脅威の情勢等」について取りまとめ、公開した。サイバー犯罪に関し警察に寄せられた相談の件数が、過去最多を記録した。
■サイバー犯罪の相談が過去最多、半数強が「詐欺・悪質商法」
サイバー犯罪等に関して全国の警察に寄せられた相談の件数は6万9977件で、前年同期と比べて3238件増加した。最も多かったのは「詐欺・悪質商法」に関する相談で、相談全体の過半数を占める3万6729件(前年同期比+2568件)。インターネットサイトで商品を注文し代金を振り込んだが商品が届かない、動画を閲覧しようとしたところ登録料金を要求されたといった相談が寄せられた。
次に多かったのは「不正アクセス等、コンピュータ・ウイルス」に関する相談で、6848件(前年同期比+2678件)。前年同期の1.6倍に急増している。ウイルス感染を警告する画面が表示され、画面に表示されていた電話番号に電話するとウイルス駆除料金を要求された、パソコンに保存していたデータが暗号化され仮想通貨を要求されたといった相談があった。
■サイバー犯罪の検挙は4209件
サイバー犯罪の検挙件数は4209件(前年同期比-71件)で、うち3808件が「ネットワーク利用犯罪」に分類されている。内訳は、最多が「児童ポルノ」726件で、「詐欺」503件、「青少年保護育成条例違反」390件と続く。
「不正アクセス禁止法違反」での検挙は247件(前年同期比-38件)。「コンピュータ・電磁的記録対象犯罪、不正指令電磁的記録に関する罪」は154件(前年同期比-67件)で、内訳の最多は「電子計算機使用詐欺」103件となっている。
■被害減るネットバンキング不正送金
インターネットバンキングによる不正送金被害は214件(前年同期比-645件)で、被害額は約5億6400万円(前年同期比-3億3300万円)だった。件数、被害額ともに減少している。個人口座の被害額の減少が顕著で(前年同期比-5億1300万円)、特に都市銀行等の個人口座被害が大きく減少している。不正送金に使用されたIPアドレス等に対する監視の強化といった対策が功を奏したとみられている。
■仮想通貨の不正送金被害が発生
今期、仮想通貨のアカウントが不正アクセスを受け、不正に送金が行われる被害も発生した。23件、5920万円相当の被害が確認されており、5月以降に急増している。被害が発生している取引所ではいずれも二段階認証を導入しているが、不正送金被害者23人のうち20人(87.0%)が、二段階認証を利用していなかった。
■マルウェアメール、添付されるファイルの形式に変化
警察と全国7613の事業者で構成される「サイバーインテリジェンス情報共有ネットワーク」を通じて把握された、情報窃取を目的としたマルウェア(ウイルス)メールは589件だった。2016年下半期(2095件)から大きく減少している。昨年から引き続き、不特定多数に送られる「ばらまき型」攻撃の報告が多く、全体の9割を占める524件。特定の企業や組織を狙ったと見られる攻撃は、65件だった。
こうしたメールでは、大学や銀行をかたるなど、送信元が偽装されていると考えられるものが全体の99%を占めている。
添付されていたファイルの形式を見ると、2016年下半期に80%を占めていた圧縮ファイルが44%(261件)に減少。Wordファイルも17%から1%(8件)に減った。増加が著しいのはPDFファイルで、2015年には3件、2016年には0件だったが、今期は215件が確認された。また、今期新たに、Wordファイルを埋め込んだPDFファイルが確認されている。
圧縮ファイルが添付されていた場合の中身については、2016年下半期に91%を占めていた「.js」ファイルが11%(37件)に減少。1%だった「.wsf」ファイルが41%(145件)に増加した。実行ファイル「.exe」は16%(55件)だった。
(2017/09/12 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・平成29年上半期におけるサイバー空間をめぐる脅威の情勢等について(警察庁)
http://www.npa.go.jp/news/release/2017/20170907001.html