有料動画や登録料金の未払いがあるといって連絡させ、言葉巧みに誘導し金を騙し取る架空請求の被害が、今年に入ってから急増している。全国の警察が9月までに把握した有料サイト利用料金名目の架空請求被害は2600件と、昨年同期の2.5倍に膨れ上がっている。
身に覚えのない未払い料金請求は、ある日突然舞い込むはがきやメール、電話番号あてに送られてくるSMS(ショートメッセージ、ショートメール)で始まる。詐欺師たちは、これらを使って不特定多数にアプローチし、相手に電話をかけさせるかメールに返信させる方法で接触をはかる。不安になって連絡して来る者がいたら、言葉巧みに騙し、実際にはない「未払い料金」を支払わせようとするのが、この架空請求の手口だ。ターゲットは、不安になって連絡して来る相手なので、連絡せずに無視すれば何も起きない。
無視することが架空請求の最善の対処方法なのだが、そうできない方は、家族や知り合いなどの確かな相手に必ず相談するようにしていただきたい。無料で相談できる公的機関を利用するのも賢明な方法だ。最寄りの消費生活相談窓口を紹介する「消費者ホットライン」は、全国共通の電話番号「188」番にかければよい。「警察相談電話」は、全国共通の短縮ダイヤル「#9110」番で受け付けている。相手に連絡したり、ひとりで考え悩んだりせず、不安に思うことがあれば気軽に利用していただきたい。
以下に、先月から今月にかけて実際に行われた、はがき、メール、SMSを使用した事例をご紹介する。不安をあおる、救済手段をちらつかせて連絡させようとする、短い期限を付けて焦らせ考える時間を与えないなど、典型的な詐欺師の手口が用いられている。
■料金未納架空請求の三大手口その1――はがき
法務省の名をかたり、訴訟の告知と称するはがきが、5月ごろからばらまかれている。今月見かけたのは、「消費料金に関する訴訟最終告知のお知らせ」や「民事訴訟通告書」と題したもの。差出人は,「法務省管轄支局 国民訴訟告知センター」や「法務省管理組合 消費者トラブル総合センター」などと記載されているが、法務省とは一切関係がない。
内容は、ある会社から訴訟されたというお知らせで、取り下げなど穏便な解決の相談にのるからすぐに連絡するよう求めるもの。連絡しなければ財産の差し押さえを強制的に執行するなどと不安をあおり、1~3日程度の短い期限を付けて、記載した電話番号あてに連絡させようとする。
<関連URL>
・法務省の名称等を不正に使用した架空請求により被害が発生しています(法務省)
http://www.moj.go.jp/hisho/kouhou/hisho06_00434.html
■料金未納架空請求の三大手口その2――メール
FC2やDMM.comなどの実在する企業をかたる架空請求メールが、「有料視聴分の未納料金をお支払い下さい。」などの件名でばらまかれている。先ごろ見かけたFC2をかたるメールは、有料動画の閲覧終了後にログアウトしなかったため、1分100円の料金がアカウント停止処分になるまでの3日間分発生しているという内容だった。未納金と遅延損害金を含む請求額513,600円を期限までに支払わないと法的手段を取ると不安をあおる一方、本人確認を行えばアカウントを削除して債権を放棄するとして、メールに返信させようとする。期限は24時間以内だ。
<関連URL>
・架空請求にご注意ください(FC2)
http://fc2information.blog.fc2.com/blog-entry-1899.html
・DMMを装った架空請求について
https://terms.dmm.com/fictitious/
■料金未納架空請求の三大手口その3――SMS
電話番号あてに短文を送ることのできるSMSは、この数年ですっかり架空請求の主要な手段になっており、先のDMM.comやFC2、ヤフー、楽天など、実在するさまざまな企業をかたったものが連日ばらまかれている。今春から急増し、今もなお最多なのがアマゾンをかたるもの。最近急増中のグーグルと、以前から多いヤフーがそれに続く。140文字という制限のあるSMSは、どれも似たような文面が使われており、有料動画や登録料などで未納料金が発生している、本日連絡がないと法的手続きに移行するという文面に、各社の窓口に見せかけた名称と連絡先の電話番号が添えられている。
この架空請求SMSについては、全国の消費生活センターや都道府県警などから再三注意喚起が出ている。最近の例では、今月14日に、東京都と消費者庁がアマゾンの架空請求SMSについて注意喚起を出している。
<関連URL>
・「法的手続きに移行する」などとSMSを送る「アマゾン」を名乗る架空請求事業者にご注意ください(東京都)
http://www.shouhiseikatu.metro.tokyo.jp/torihiki/shobun/shobun171114.html
・SMSを用いて有料動画の未納料金の名目で金銭を支払わせようとする「アマゾンジャパン合同会社等をかたる架空請求」に関する注意喚起[PDF](消費者庁)
http://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_policy/information/pdf/consumer_policy_information_171114_0001.pdf
・Amazon.co.jp からの連絡かどうかの識別について(アマゾン)
https://www.amazon.co.jp/gp/help/customer/display.html?nodeId=201909120
■支払いに悪用されるコンビニ
架空請求の支払い方法には、以前は現金の送付や振り込みがよく用いられたが、現在はコンビニで扱っている、アマゾンや楽天などのプリペイドカード(ギフトカード)が用いられることが多い。プリペイドカードを購入させ、裏面のカード番号を伝えさせたり、犯人が持つプリペイドカードにコンビニでチャージさせたりする手口だ。
昨年あたりからは、コンビニ収納(コンビニ決済)を使う手口も増えてきているという。ネット通販やネットオークションのコンビニ払いの代金を支払わせたり、コンビニ払いに対応した仮想通貨の犯人の口座に入金させたりする方法で、直接あるいは間接的に金銭を手に入れる。架空請求に限らず、支払いのためにコンビニに行くよう促されたら、詐欺を疑っていただきたい。
<関連URL>
・ギフト券詐欺にご注意ください(アマゾン)
https://www.amazon.co.jp/b/?node=4048518051
(2017/11/21 ネットセキュリティニュース)