実在する企業やサービスを装ったメールやSMSで偽のWebサイトに誘導し、ログイン情報やクレジットカード情報などを騙し取るフィッシングが、7~8月も毎日休むことなく続いた。高頻度で出現するアップル、アマゾン、LINEのフィッシングに佐川急便も加わり、通信事業者やクレジットカード会社のフィッシングも相変わらず続いている。
フィッシング対策協議会の2018年7月、8月の月次報告によると、同協議会に寄せられたフィッシング報告件数 (海外含む) は、7月が前月より32件減少の1977件、8月はさらに103件減少し1874件となった。ユニークなURL件数は、7月が前月より160件増加し996件、8月は42件減少し954件となった。悪用されたブランド件数 (海外含む) は、7月が前月より7 件増加の41件、8月は9件減少し32件となった。
同協議会が出した緊急情報は、7月がソフトバンクとJCBの2回、8月が常連組のアマゾンとLINE、クレジットカード会社のクレディセゾンと三菱UFJニコス、新登場の佐川急便の計5回だった。このほかに、通信事業者のNTTドコモ、カード会社の楽天カード、仮想通貨のMyEtherWallet(マイイーサウォレット)のフィッシングメールやSMSも頻繁にばらまかれた。
■LINEのフィッシングアクター増殖、8月末には「第三」も登場
アップルやアマゾンを装うフィッシングでは複数のアクター(攻撃者)が入れ代わり立ち代わりメールをばらまいているのに対し、LINEを装うフィッシングは長らく単独グループの攻撃にとどまっていた。6月に登場した新たなアクターが7~8月も引き続き参戦し、2組による攻撃が毎日のように続いた。古参組の偽サイトは、2017年3月末から「.cn」ドメインで稼働していたが、8月から「.top」へと移行。「.cc」「.com」「.jp」ドメインを使った新参組の偽サイトが加わり、偽サイトの乱立状態になった。どちらも、偽サイトにログインさせ、電話番号とSMSなどで届く4桁の認証番号を入力させてLINEを乗っ取る手口だ。8月末には第三のアクターも登場しており、さらなる警戒が必要だ。
■「キャリア決済」狙うフィッシング多発
通信事業者を装うフィッシングが7~8月も多発した。ソフトバンク、NTTドコモ、KDDI(au)が提供するキャリア決済を狙ったもので、各社のマイページに侵入して使い込む手口と、攻撃者が用意したApple IDの支払い方法にユーザーのキャリア決済を登録させて使い込む手口とが確認された。アカウント情報や携帯電話番号、番号あてにSMSで届くコード(数字)を渡してしまうと、キャリア決済が限度額まで使い込まれてしまう。Apple IDに登録して使い込む手口では、通信事業者3社のほかに「Yahoo!ウォレット」を装う偽サイトも見つかっている。
■「偽佐川急便」がフィッシングに参戦
キャリア決済を狙うフィッシングの仕掛け人たちは、「お客様宛にお荷物のお届けにあがりましたが不在の為持ち帰りました。下記よりご確認ください。http://sagawa-●●.com」という、宅配便の不在通知を装うSMSで佐川急便の偽サイトに誘導し、Android端末に不正なアプリ「sagawa.apk」をインストールさせる攻撃も手掛けている。この佐川急便を装う偽サイトが8月初めにリニューアルし、これまで対象外だったiPhoneに対し、フィッシングを仕掛けるようになった。
送られてくるSMSはこれまでと同じ内容だ。リンク先にアクセスすると、Android端末にはこれまでどおりに偽アプリを投下するが、iPhoneでアクセスした場合には、別所にあるフィッシング用の偽サイトへと飛ばされる。そこでは、「Apple社から送られた製品はセキュリティ許可の認証が必要となります」と言って、携帯番号とSMSで届くコードを入力させようとする。Apple IDの支払い方法にユーザーのキャリア決済を登録させて使い込む手口のフィッシングだ。
宅配便の不在通知を装うSMSは、7月19日頃から急増しており、8月中も連日ばらまかれた。Android端末にとっては佐川急便の偽アプリの、iPhoneにとってはフィッシングの脅威が拡大した8月となった。
■災害に便乗する「偽募金サイト」出現
6月末から7月上旬にかけて西日本を襲った「平成30年7月豪雨」の被災地支援を募る「Yahoo!ネット募金」の偽サイトが、7月15日頃に出現した。偽サイトの募金は、クレジットカードまたは電子マネーのウェブマネー(WebMoney)で支払うようになっており、クレジットカードで支払おうとすると「カード情報」を、ウェブマネーで支払おうとすると「プリペイド番号」や「ウェブマネーウォレットのアカウント情報」を騙し取ろうとする。
同じ手口でクレジットカード情報の詐取に特化した偽サイトが、8月以降もたびたび出現している。直近のものは9月27日にフィッシングメールがばらまかれており、偽募金サイトは28日現在も稼働中だ。
(2018/09/28 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
<フィッシング対策協議会7月>
・2018/07 フィッシング報告状況
https://www.antiphishing.jp/report/monthly/201807.html
・[更新] ソフトバンクをかたるフィッシング (2018/07/04)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/softbank_20180704.html
・[更新] MyJCB をかたるフィッシング (2018/07/24)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/jcb_20180724.html
<フィッシング対策協議会8月>
・2018/08 フィッシング報告状況
https://www.antiphishing.jp/report/monthly/201808.html
・佐川急便をかたるフィッシング (2018/08/10)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/sagawa_20180810.html
・[更新] MUFG カードをかたるフィッシング (2018/08/13)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/mufgcard_20180813.html
・セゾン Net アンサーをかたるフィッシング (2018/08/20)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/saison_20180820.html
・LINE をかたるフィッシング (2018/08/24)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/line_20180824.html
・Amazon をかたるフィッシング (2018/08/27)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/amazon_20180827.html
<ヤフー>
・【重要】当社をかたるフィッシングメール、不正メールにご注意ください。
https://notice.yahoo.co.jp/donation/archives/20180717-a.html
・当社をかたるフィッシングメール、不正メールに関する注意喚起
https://security.yahoo.co.jp/news/0005.html