5月30日、金沢地裁は、住民基本台帳ネットワークシステム(住基ネット)は、国民のプライバシーの権利を保障する憲法13条に違反するという判断を示した。
これは、石川県の住民28人が国などを相手に、住基ネットからの個人情報削除と、1人あたり22万円の損害賠償を求めていた訴訟の判決で、井戸謙一裁判長は「行政事務の効率化自体は正当な行政目的だが、住民のプライバシーの権利を犠牲にしてまで達成すべきものとは評価できない」とし、原告の個人情報削除を命じている。
翌31日、名古屋地裁では、愛知県の住民13人が訴えていた同様の訴訟に対し、西尾進裁判長が「住基ネットは違法だとはいえない」として、原告の請求を棄却している。
住基ネットは住所や氏名などの個人情報を全国の自治体が専用回線で共有するシステムで、2003年8月に本格稼働した。住民票コードを使い、行政機関がもつ膨大な個人情報を瞬時に集めることが可能だ。
金沢地裁の井戸裁判長は、こうした住基ネットを使った”名寄せ”により、住民が行政機関の前で丸裸の状態となり、委縮効果が働いて個人の人格的自律が脅かされるとしている。一方、名古屋地裁の西尾裁判長は、住基ネットが目的以外に使用される危険なシステムとは認められないとの判断を示した。
(2005/06/01 ネットセキュリティニュース)
■住民基本台帳ネットワークシステム(地方自治情報センター)
http://www.lasdec.nippon-net.ne.jp/jyukinet/index.html
■住民基本台帳ネットワークシステム(総務省)
http://www.soumu.go.jp/c-gyousei/daityo/
■金沢地方裁判所
http://courtdomino2.courts.go.jp/K_home.nsf/CoverView/HP_C_kanazawa?OpenDocument
■名古屋地方裁判所http://courtdomino2.courts.go.jp/K_home.nsf/CoverView/HP_C_nagoya?OpenDocument