警察庁は19日、インターネット上の違法・有害情報の通報窓口として同庁から委託を受けてる「インターネット・ホットラインセンター」の2008年の運用状況を発表した。
発表によると、同センターが2008年中に受理した通報件数は、前年の8万4964件から59.0%増の13万5126件。情報件数は14万3280件(前年9万1469件~56.6%増)に上る。うち違法情報が9.9%にあたる1万4211件(前年91,469件~10.9%増)、有害情報が4.3%にあたる6122件(前年3,600件~70.1%増)で、85.8%にあたる12万2947件(前年7万5051件~63.2%増)は同センターが対象としていないその他の情報だった。
同庁では、同センターへの通報件数が予想を上回って増加し処理に時間を要しており、今後は体制の強化を図り業務処理の迅速化・効率化に努めるとしている。また、同センターについての広報啓発の促進や、関係行政機関・団体との連携の強化も図る予定。
●違法情報
通報を受けた違法情報の内訳は、わいせつ物公然陳列の8121件(57.1%)を筆頭に、児童ポルノ公然陳列の1864件(13.1%)、口座売買等の勧誘・誘引の1296件(9.1%)、携帯電話の匿名貸与業・無断譲渡業等の勧誘・誘引1117件(7.9%)、規制薬物の広告1,020件(7.2%)と続く。特にわいせつ物公然陳列に関しては、前年の6004件(46.8%)から2117件(57.1%増)と大幅に増加している。
国内サーバーに置かれた違法情報(9351件)は、全て警察に通報しており、通報前に削除された1130件を除く8221件が通報。うち、捜査上保全された1041件とプロバイダ等に削除依頼を行う前に削除された766件を除く6414件については、プロバイダ等に対して削除を依頼。85.0%にあたる5451件が削除された。
また、海外サーバーに置かれた違法情報のうち、わいせつ物公然陳列86件と児童ポルノ公然陳列476件の計553件については、諸外国のホットラインとの連絡組織であるINHOPE(インターネット・ホットライン国際協会)加盟ホットラインへ通報。海外からは369件の通報を受け、警察への通報や国内のプロバイダ等への削除依頼を行った。
●有害情報
同センターが扱う有害情報は、(1)けん銃等の譲渡、爆発物の製造、児童ポルノの提供、公文書偽造、殺人、脅迫等の違法行為を直接的かつ明示的に請負・仲介・誘引等する情報。(2)違法情報に該当することが明らかであると判断することは困難だが、その疑いが相当程度ある情報。(3)集団自殺の呼びかけ等の人を自殺に勧誘・誘引する情報、の3種類に区分しており、通報を受けた有害情報の97.5%にあたる5971件を(1)が占める。有害情報の増加は、この(1)が前年の3321件から2650件(79.8%増)と急増したためで、硫化水素自殺関連の通報増加がその大きな要因と考えられる。警察庁は硫化水素自殺の多発を受けて昨年4月、硫化水素ガスの製造方法を誘引する情報を(1)に該当するものとして扱うよう同センターに指示。それまで月200~300件ペースだった当該情報の件数は、4月601件、5月659件、6月602件と跳ね上がっている。
国内サーバーに置かれた有害情報(3282件)は、全てプロバイダ等に対して削除依頼を行っており、保全された326件と依頼前に削除された696件を除く2260件の削除を依頼。75.8%にあたる1713件が削除された。
●その他の情報
違法情報、有害情報には分類されないその他の情報には、一部に知的財産侵害情報(1487件、前年1044件~42.4%増)や、殺害予告・爆破予告(844件、前年283件~198.2%増)、名誉毀損・誹謗中傷(122件、前年177件~31.1%減)などが含まれるものの、大半は合法的なポルノや出会い系サイトに関するもので、うち知的財産侵害情報1203件や殺害予告・爆破予告92件など、計1305件を関係機関や団体に通報した。
殺害予告・爆破予告が激増してるのは、秋葉原無差別殺傷事件が大きな要因と考えられる。それまで月数十件だった同情報の通報は、事件が起きた6月に瞬間的に跳ね上がり、同月だけで前年1年分を上回る328件を記録。その後は7月130件、8月45件、9月90件と続き、10月以降はおおむね元のペースに戻った感じだ。
(2009/03/24 ネットセキュリティニュース)
■平成20年中の「インターネット・ホットラインセンター」の運用状況について[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/statics/h20/pdf48.pdf
■硫化水素ガスの製造を誘引する情報の取扱いについて[PDF](警察庁)
http://www.npa.go.jp/cyber/policy/suicide/image/H2Stsutatsu.pdf
■インターネット・ホットラインセンター
http://www.internethotline.jp/