Web上の動画ファイルを閲覧しようとするユーザーを狙ってウイルスを配布するサイトが出現している。Panda Securityは22日、約5000件ものYouTube動画のコメント欄にウイルス配布サイトのURLが書き込まれていると注意を呼びかけた。また、今月中旬には、Adobe Flash Playerの偽サイトの出現も報告されている。
■最大4900件のYouTube動画にウイルス配布サイトのURL
スペインのセキュリティベンダーPanda Securityは22日、最大4900件のYouTube動画にウイルス配布サイトのURLが書き込まれていると注意を呼びかけた。
Panda Securityによると、YouTube動画のコメント欄にアダルトサイトに見せかけたコメントとリンク先のURLが書き込まれているという。特徴的なのが、URLのドット(.)の部分をブラケット([ ])でくくり、直リンクにはしていない点だ。ブラケットをはずしたURLはウイルス配布サイトで、誘導先のサイトで動画を見ようとすると「Flash Playerのバージョンが古くなっている」として最新版にするよう促される。そこで「Get the latest Flash player」をクリックすると、ウイルスがダウンロードされてしまう。ウイルスは、システムをスキャンするふりをして、実際には存在しないウイルスを検出したように見せかけ、アンチウイルスソフトの押し売りを行う。
編集部で調べたところ、ウイルスのファイル名は「flash_player_v11.exe」。VirusTotalにかけてみると、ウイルスを検出できたセキュリティソフトは22/40だった。該当するURLが書き込まれたYouTube動画は28日夕方時点で最大で1万5000件以上。誘導先は25日の時点では閉鎖されていたが、28日には場所を移して復活していた。
Panda Securityは、YouTubeのコメントを使ってウイルス配布サイトに誘導するテクニックは新しいものではないが、今回は大量の動画に影響を及ぼしているのが特徴で、自動的なツールが使われていると述べている。
■Adobe Flash Playerの偽サイト出現~偽インストーラーの正体はウイルス 一方、今月13日、フィンランドのセキュリティベンダーF-SECUREが、Adobe Flash Playerの偽サイトの出現について注意を呼びかけた。
F-SECUREによると、攻撃者はサイトを訪問したユーザーに、サイトの動画を見るためには「新しいバージョンのAdobe Flash Player」にアップデートする必要があるというメッセージを表示し、Flash Playerの偽サイトに誘導。偽サイトのページの体裁やダウンロードされたインストーラーは本物そっくり作られており、F-SECUREは「訪問者がアドレスバーをじっくり見ない限り、かなり簡単に騙されるはずだ」と述べている。
偽インストーラーの正体はウイルスで、編集部でVirusTotalにかけてみたところ、ウイルスを検出できたセキュリティソフトは14/40だった。また、米トレンドマイクロも偽のFlash Playerについて注意を呼びかけている。
■対岸の火事ではない日本の状況~動画閲覧時に注意
今回のケースは決して対岸の火事ではない。日本でも、Web上の動画ファイルを閲覧しようとクリックを繰り返すうちにウイルス感染するケースが後を絶たず、4月には情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA/ISEC)が注意喚起を行った。また、先日は「ニコニコ動画」や「@wiki」と紛らわしいドメインを使ってウイルスを配布するサイトが出現している。
もし、今回のケースのように、動画を見ようとしたときに「Flashのバージョンが古いのでアップデートしてください」と表示され、本物そっくりな偽サイトに誘導されたとしたら、偽サイトだと見極めることができるだろうか。
あの手この手で仕掛けてくる攻撃者に騙されないためには、動画を見ようとしたときに何かのファイルをダウンロードさせようとしたり、メディアソフトのアップデートを要求されても、決してダウンロードしないようにすることだ。また、動画をクリックしただけでウイルスソフトがダウンロードされることもあるが、その場合はセキュリティの警告画面が表示されるので、必ず中止して引き返すことが肝要だ。ソフトが最新バージョンかどうか不安なときは、必ず正規サイトにアクセスしてアップデートを行うよう強くお勧めする。
■YouTube riddled with comments leading to Malware[英文](PandaLabs Blog)
http://pandalabs.pandasecurity.com/archive/YouTube-riddled-with-comments-leading-to-Malware.aspx
■Adobe Flash Playerの偽サイト(エフセキュアブログ)
http://blog.f-secure.jp/archives/50241583.html
■Fake Videos Lead to Fake Flash Player[英文](TrendLabs MALWARE BLOG)
http://blog.trendmicro.com/fake-videos-lead-to-fake-flash-player/
(2009/05/29 ネットセキュリティニュース)