コンテンツ海外流通促進機構(CODA)は4日、昨年11月に実施した「ファイル共有ソフトの利用に関する調査」の調査結果(速報版)を公表した。
この調査は、経済産業省の知的財産権侵害対策強化事業の一環として行われた調査で、マーシュ(東京都世田谷区)が運営するアンケートサイトを利用。何らかの方法で選出した中高生のインターネットユーザー8746名と、これを除く15歳以上のインターネットユーザー3万9245名を対象に、オンラインアンケート方式で実施している。
それによると、過去1年以内にファイル共有ソフトを利用したことのある「現在利用者」は、ともに5.8%となった。CODAのリリースでは、関連団体が実施した同種の調査で、昨年度が9.1%、一昨年度が10.3%だったことから、利用率が年々低下していると評価。コンピュータウイルスの感染や情報流出への心配などが、その要因となっているとみている。
ここで参照されている「関連団体が実施した同種の調査」とは、これまでコンピュータソフトウェア著作権協会などが行っていたアンケート調査を指す。過去の調査では、調査会社を変更した2007年度に、現在利用者が前年の3.5%から9.6%に急変している。上記の一昨年度10.3%、昨年度9.1%は、変更後の同じ調査会社で行ったその後の推移だ。
今回の調査では再び調査会社が変更されている点に注意する必要がある。前年とは異なる調査なので、結果を単純に比較することはできず、利用率が前年からどう変化したのかは分からない。
■現在利用者の3割が主にWinnyを利用
現在利用者が最も利用しているファイル共有ソフトは、15歳以上がWinny系(27.9%)、Cabos(17.9%)、BitTorrent系(15.0%)、Limewire(13.0%)、Share(10.0%)。中高生がWinny系(30.2%)、BitTorrent系(26.0%)、Cabos(17.9%)、Limewire(7.9%)、Share(6.3%)と続く。Winny系の利用者が依然として多いが、近年高まってきたBitTorrent系の人気を裏付けるような結果となっている。
■ダウンロードは音楽関連ファイルが人気
ダウンロードしたことがあるファイルのジャンルは、「音楽関連ファイル」が圧倒的に多く、15歳以上の73.7%、中高生の88.9%が経験ありと回答。どちらも、日本のアーティストの楽曲が多い。「映像関連ファイル」のダウンロード経験も多く、15歳以上45.4%、中高生43.3%と、ともに半数近くが回答。中高生ではこれに加え「ソフトウェア関連」も40.9%と多く、ゲームソフトのダウンロード率が高い。
■ファイル共有ソフト利用による消費行動の変化
ファイル共有ソフトの利用によるコンテンツの消費行動の変化をみると、最もダウンロード経験の多い「音楽関連ファイル」などは変化も大きく、15歳以上では、音楽CDの購入が減ったとの回答が28.2%、増えたとの回答が4.5%。CDレンタルは24.1%減、6.9%増。ダウンロード購入は14.4%減、8.8%増となっている。
中高生では、音楽CDの購入が26.6%減、10.1%増。レンタルが30.2%減、7.9%増。ダウンロード購入が23.6%減、5.4%増。他の消費行動においても、変化のない利用者や、もともと購入などしていない利用者が7~8割を占める一方、変化のあった利用者はいずれも、減少が増加を上回る結果だ。
消費の減少は、単純に考えるとファイル共有ソフトで入手したため購入やレンタルが減ったと結論付けてしまいがちだが、必ずしもそうとは限らない。別のことに時間を費やするなどしたため、もはや入手対象ではなくなってしまったというケースもあるだろう。たとえば、ビジネスソフトのダウンロード経験者4.7%(中高生3.0%)に対し、ビジネスソフトの購入が減ったとの回答は、それを上回る9.6%(中高生15.7%)も寄せられている。ダウンロードしたから、それを買うのを止めたというわけではないのだ。
■少ない共有ファイルの元ネタ作成者
ファイル共有ソフトの現在利用者のうち、15歳以上の30.9%、中高生の26.6%がファイルの共有(公開)経験があると答えている。興味深いのは、共有経験者の多くが共有用のファイルを自分で作成するのではなく、入手したファイルを共有しているという点だ。
特に多いのが、ファイル共有ソフトでダウンロードしたもので、15歳以上の65.5%(中高生76.1%)が、ファイル共有ソフトを入手経路に挙げている。次いで、動画投稿サイトからのダウンロード18.3%(中高生14.2%)、オンラインストレージやアップローダーからのダウンロード13.6%(中高生10.4%)。
CDなどから自分でファイルを作成するなど他の方法によるものは、いずれも1割に満たない。ファイル共有が少数のファイル作成者と、そのたらい回し成り立っている様子がうかがえる。
(2011/02/16 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・ファイル共有ソフトの「現在利用者」は5.8%~利用実態のアンケート調査結果まとまる~(コンテンツ海外流通促進機構)
http://www.coda-cj.jp/news110204.html
・ファイル共有ソフトの利用に関する調査報告書(速報版)[PDF](経済産業省)
http://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2010fy01/E001204.pdf