フィッシング、ウイルス配布、詐欺、誹謗中傷、犯行予告、著作権法違反、児童ポルノ…。様々な悪事がはびこるインターネットだが、摘発後も違法状態が解消されないまま放置されているケースをしばしば見かける。
■「MEGAUPLOAD」に残る1600冊の漫画ファイル
警視庁ハイテク犯罪対策総合センターと高輪署は2月5日、オンラインストレージサービス「MEGAUPLOAD」を利用して漫画の画像ファイルをネット上に無許で配信したとして、秋田県潟上町の男子学生(18歳)を著作権法違反(公衆送信権侵害)容疑で逮捕した。 男子学生は、自身が運営するブログに、MEGAUPLOADにアップロードしたファイルのリンクを貼って誘導していた。コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)によると、ブログには、コミック約260作品、3800冊分のファイルが掲載されていたという。
摘発が公表された直後に編集部が行った調査では、問題のブログはすでに閉鎖されていたが、過去に少なくとも257作品、3703冊分のファイルが公開されていたことを確認。うち1615冊分のファイルが、その時点でもダウンロード可能な状態にあった。
それから1か月余りが過ぎた今月半ば、「MEGAUPLOAD」に残っていたファイルを再チェックしたところ、この間に削除されたのは、わずか7冊。残り1608冊分のファイルは当時のまま、誰でも自由にダウンロードできる状態だった。
男子学生の直接の逮捕容疑となった「ぬらりひょんの孫 第11巻」「エデンの檻 第8巻」「SKET DANCE 第14巻」の3冊については、公表された直後の段階ですでに削除済みだったが、「ぬらりひょんの孫」は1~10巻を残したまま、「エデンの檻」は1~7巻を残したままピンポイントで削除されており、「SKET DANCE」は1~15巻のうちの3、7、14、15のみが削除されていた。掲載形跡があった作品の中には、全巻削除されたものや、数巻が残るものの連番でごっそり削除されたものも多い中、実に不可解な削除状況だった。
男子学生のブログ閉鎖により、違法ファイルが閲覧される機会は減ったのかも知れないが、大元を残して入口だけを塞ぐのは、根本的な解決にはならない。残っているファイルの中には、他のサイトからリンクされているものもあり、今もなお閲覧され続けている可能性がある。
・「MEGAUPLOAD」で漫画を違法配信、男子学生を逮捕(ACCS)
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2010/1031.php
■1か月近く放置されたYouTube公開の漫画
無断配信された漫画が摘発後に閲覧され続けた事例は、昨年6月に動画投稿サイトのYouTubeでも起きている。
京都府警と佐賀県警、沖縄県警の合同捜査班は2010年6月14日、少年漫画雑誌掲載の漫画を撮影して動画に加工し、無断でYouTubeに公開していた名古屋市の男子中学生(14歳)を、著作権法違反の容疑で逮捕した。
直接の容疑となったのは、「少年ジャンプ」掲載の「ONE PIECE」など4作品だが、編集部が調査では、これら4本を含む82本(漫画らしきものは66本)の動画が男子中学生のアカウントで投稿されており、6月14日時点で、のべ804万8260回閲覧されていた。この閲覧回数から、京都府警は被害総額約19億2千万円相当にのぼるとみていると、当時の産経新聞が伝えている。
男子中学生は、動画の投稿をブログやTwitter上で告知しており、ブログはすでに閉鎖されていたが、TouTubeに投稿された動画の方は、その後も全く削除されることなく、翌月10日に男子中学生のアカウントが停止されるまでの間、3週間以上に渡って誰でも自由に閲覧っできる状態が続いた。この間に閲覧されたのべ数は、52万回以上。府警の算定を当てはめると、この間に膨らんだ被害額は約1億2400万円。連日500万円近くの被害にあった計算になる。
ただし、あくまでこれは、閲覧数分だけ雑誌が売れたと仮定した場合の売上高に過ぎず、実際に毎日500万円近くの資産が減り続けて行くという事態ではない。この辺が、一刻も早くそれを止めようとはせず、放置が続いてしまう原因なのかもしれない。ちなみに男子中学生は、同月25日付で家裁に送致され、翌月22日に保護観察処分となった。
・「YouTube」での違法アップロードを初摘発(ACCS)
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2010/1009.php
■摘発後も残る違法販売サイト
摘発後もネット上に残るのは、無断で公開された著作物の残骸ばかりではない。海賊版や大麻などの違法な販売サイトが、そのまま放置され続けることがある。摘発したから注文は受けられないという見方もあるが、サイトで広告していること自体を違法としたケースでさえ、早期にサイトを閉鎖しようという動きがみられなかったりする。
パソコンソフトの海賊版販売サイト「TuneMac」を運営していた横浜市鶴見区の男(30歳)が、昨年7月25日、茨城県警に逮捕された。男は同月27日に送検された後、同年9月24日に海賊版の広告行為で追送検された。サイトを開設して海賊版の頒布を申し出る行為は、同年1月に施行された改正著作権法で新たに違法と規定された広告行為にあたるという。問題となった「TuneMac」は、今年1月まで放置されていた。
昨年11月、大麻種種子を観賞用と称して販売していた埼玉県東松山市の男(30歳)が、兵庫県警に逮捕された。男の自宅などからは、大麻草も押収されたそうだが、報道された逮捕容疑は大麻所持ではなく、サイトで種子販売を広告し、大麻草の栽培を助長したという麻薬特例法違反(あおり、そそのかし)だという。大麻草の栽培を助長する行為とされた大麻種子販売サイト「Weed Freaks」は、先月まで放置されていた。
未承認のED治療薬などを輸入販売したとして、警視庁生活環境課などが先月8日、REX(東京都千代田区)の社長ら5人を薬事法違反容疑で逮捕した。同社は個人輸入代行業者を装っていたが、実際には自ら輸入して販売していたという。
未承認医薬品の個人輸入は自由であり、輸入手続を請け負う代行業者が、医薬品の輸入手続きを代行するに当たり、薬事法に基づく許可を受ける必要もない。しかし、業者が自ら輸入販売することはもちろん、広告することも禁じられている。この広告には、効用をうたうような宣伝だけではなく、サイトに商品名を掲載することも、特定の医薬品であることがわかるような表示も含まれる。同社が開設した個人輸入代行業を装った複数のサイトは、今もなおネット上に残っており、違法なはずの未承認医薬品の広告を掲載し続けている。
・公判中に海賊版販売を再開、執行猶予中の男性を送致(ACCS)
http://www2.accsjp.or.jp/criminal/2010/1015.php
(2011/04/01 ネットセキュリティニュース)