受信者に承諾を得ずに送る迷惑メールに関連し、行政指導と摘発が相次いだ。
2008年12月に施行された特定電子メール法(特定電子メールの送信の適正化等に関する法律)と特定商取引法(特定商取引に関する法律)の改正法では、事前の同意なく広告宣伝メールを送信することを禁ずる、「オプトイン規制」が導入された。
特定電子メール法は、主にメールの送信者を対象としており、未承諾メールの送信者に対し措置命令を出し、命令に従わない場合には罰則(1年以下の懲役または100万円以下の罰金)が用意されている。特定商取引法は、主にメール送信の依頼者(広告主)を対象としており、こちらは迷惑メールに対し、いきなり罰則(100万円以下の罰金)を科すことができる。
広告主自らが未承諾メールを送信した場合には、どちらの法も当てはまるが、行政指導の場合は特定電子メール法を適用。今回の行政指導は、同法に基づく今年10件目の措置命令となる。未承諾メールの摘発には特定商取引法が用いられ、今回の摘発は以前に摘発した特定商取引法違反の、ほう助罪が適用されている。
■総務省と消費者庁が「LoveMail」の運営会社CyberFactoryに措置命令
消費者庁と総務省は22日、特定電子メール法に違反し、自社が運営するWebサイト「LoveMail」の広告宣伝メールを配信したCyberFactory(大阪市中央区)に対し、同法を守るように命じる措置命令を行った。
発表によると、同社は少なくとも昨年4月1日~今年6月16日までの間、同サイトの広告宣伝メールを受信者の同意を得ずに配信していた。また、少なくとも昨年4月1日から今年6月16日までの間、同サイトの広告宣伝メールに送信者の名称を表示していなかった。
迷惑メールの相談を受け付けている日本データ通信協会には、同社が配信した迷惑メールの相談が、637人から、のべ6767件あったという。
・株式会社CyberFactoryに対する特定電子メール法違反に係る措置命令について[PDF](消費者庁)
http://www.caa.go.jp/trade/pdf/110722kouhyou.pdf
・株式会社CyberFactoryに対する特定電子メール法違反に係る措置命令の実施(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban08_01000036.html
■警視庁がアドレス屋を書類送検
警視庁は25日、出会い系サイト運営会社にメールアドレスを販売したとして、埼玉県戸田市のインターネット関連会社の社長(38歳)と従業員(28歳)を、特定商取引法違反(未承諾者への広告メールの禁止)ほう助容疑で書類送検した。
社長らは今年1月、迷惑メールの送信に使われると知りながら、東京都新宿区の出会い系サイト運営会社にメールアドレス3000件を販売し、広告メールの送信を手助けした疑い。
報道によると、同社の販売先のひとつは、警視庁が今年5月に摘発した出会い系サイトの運営会社だったらしい。この運営会社は、3月の震災直後、「娘を助けてください!地震は大丈夫でしたか」などという件名で、出会い系サイトへのリンクを貼った広告メールを送信し同法違反で摘発。警視庁は、運営会社が特定の業者からメールアドレスを入手していたとみて捜査していた。
メールアドレスの販売業者は「アドレス屋」などと呼ばれており、国内にも多数存在する。アドレスの販売価格は、業者や件数などによってまちまちで、1件あたり1銭に満たないものもあれば数十円のもある。中には出会い系サイトの登録者とか、懸賞サイトの応募者というように特化されたものもあり、会員情報付きで高値で取引されていたりする。この手のサイトの利用には、こうしたリスクが付きまとうことに留意したい。
(2011/07/29 ネットセキュリティニュース)