広告モジュールを組み込んだAndroidアプリが増えている。アプリ自体を無料や格安で提供する代わりに、広告で収益をあげようというのだ。こうした広告モジュールの多くは不正なものではないが、中には悪質な広告モジュールが紛れ込んでいることもある。
IPA(情報処理推進機構)の3月の呼びかけでは、「公式マーケット上の不正なアプリに注意!」と題して、公式マーケット「Google Play」で配布されていた壁紙アプリのひとつがとりあげられた。
ダウンロード数50万以上を超えるこのアプリは、Wallpaper(壁紙)をうたっているにもかかわらず、端末情報の読み取りなどの不自然な許可(パーミッション)を求め、メールアドレスや端末識別番号、位置情報などを、外部のサーバーに送信しようとしたという。従来の不正アプリと違い、このアプリには、本来の壁紙を表示する機能があったが、IPAは、これを不審に思われにくくする効果を狙ったものと推測し、実際には端末情報などを窃取するための不正なアプリだと断じた。
IPAの報告にあるアプリの挙動からは、必ずしもアプリ自体に悪意があるとは限らないため調査したところ、このアプリは、複数の広告モジュールを内包していたことが分かった。
ユーザーの趣向などに合わせて広告を表示する、ターゲッティング広告を行う場合、広告モジュールは、ユーザーや端末、国、言語、場所などを特定するための情報を、端末から取得して送信しようとする。このため、アプリ本来の機能からは不自然としか思えないような許可を求めてくることがしばしばある。ところが、求めている許可がアプリに必要なものなのか、広告に必要なものなのかを識別することはできない。どのような広告モジュールを内包しているのか、アプリや広告モジュールに悪意はないのか、作者や広告会社は嘘をついていないのかといったことも、そう簡単にはわからないのが現状だ。
広告モジュールの多くは不正なものではないが、中には迷惑な告モジュールもある。そして、それを意図的に組み込んだアプリもあれば、そうとは知らぬまま作者がクリーンなアプリに組み込んでしまったり、アップデート時に追加してしまったりすることもある。
件の壁紙アプリには、8種類の広告モジュールが組み込まれており、その中には、シマンテックやトレンドマイクロが悪質と指摘する、Airpush社の広告モジュールも含まれていた。通常の広告モジュールが、アプリの使用中にアプリ内に広告を表示するのに対し、Airpushは通知バーを使って広告の配信を知らせる。ユーザーがアプリを使用しているかどうかに関わらず、強制的に広告を配信しようとするのだ。
広告モジュールを内包したアプリは、Google Playはもちろん携帯各社の公式サイトにも多数あり、一部の広告モジュールは機微な情報を取得することがある。それ自体を不快に思う方は、インストール前に許可項目をよく確認し判断していただきたい。許可してもかまわないと考える方は、広告モジュールの中には、このような配信方法をとるものもあるということを覚えておいていただきたい。不快な方は、アプリをアンインストールすれば配信が停止する。どのアプリ経由で配信されているのかは、Android端末の標準機能では判断が難しいので、アプリが内包している広告モジュールを検索するアプリ(Airpush専用のものもある)を使用するとよい。
(2013/04/30 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・2013年3月の呼びかけ「公式マーケット上の不正なアプリに注意!」(IPA)
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2013/03outline.html
・Androidパーミッション:アプリのため?広告のため?(エフセキュア)
http://blog.f-secure.jp/archives/50647647.html
・不明瞭化を始めた Airpush の広告モジュール(シマンテック)
http://www.symantec.com/connect/blogs/airpush
・モバイル端末用アドウェアに関する問題の増加について(トレンドマイクロ)
http://blog.trendmicro.co.jp/archives/6050