Windows XPのサポート終了が間近に迫り、情報処理推進機構(IPA)は29日、継続利用に伴うリスクについて注意を呼びかけた。月例のセキュリティ更新プログラム(パッチ)の提供は、残すところあと3回。その後は、脆弱性が修正されずに累積していくハイリスクなOSになってしまう。使い続ける危険とその回避策をまとめた。
IPAによると、Windows XPの脆弱性は、過去5年間で618件、昨年だけでも123件確認されており、未知の脆弱性が少なからず潜在し、攻撃者による悪用が懸念されるという。
■1年間で135件の脆弱性が修正され、うち60件が「緊急」
マイクロソフトが公表している脆弱性情報をもとに確認してみると確かに脆弱性は多く、昨年1年間にWindows Updateなどを通じて提供されたマイクロソフト製品のパッチは106、脆弱性の件数は脆弱性識別番号(CVE)ベースで250件あった。うち、Windows XP/Vista/7/8に影響するパッチは67、脆弱性の数は176件。 OS別に見ると、昨年修正されたWindows XPの脆弱性は135件あり、うち60件が深刻度の最も高い「緊急」と評価されている。「緊急」の脆弱性は、ユーザーの操作なしでコードが実行されるおそれのあるもの。すなわちウイルス感染に悪用される可能性の高い脆弱性だ。ちなみに60件の「緊急」の中には、Windows XPだけが抱えていた脆弱性が4件含まれている(ほかにXP固有の「重要」が2件)。発売以来12年を経ても、いまだに危険な問題が次々と見つかっているのだ。
半数近くがウイルス感染への悪用を懸念される脆弱性が、今もなお月10件のペースで見つかっているなか、4月以降はそれが全く修正されなくなってしまう。これに追い打ちをかけるように、アプリケーションのサポートも次第に打ち切られていく。こちらも問題があっても修正されなくなるため、未修正の脆弱性はさらに累積していく。その中には、新しいウイルスなどに対応していくために更新が欠かせない、セキュリティソフトも含まれている。新しいソフトやハードの対応からも、遅かれ早かれ外されてしまい、Windows XPは八方塞がりの状態しか待っていない。
■八方塞がり状態の打開策について
こうした状況の打開策として、IPAは、サポートが継続している後継OSや代替OSに移行することをあげている。少し補足しておくと、Windows XPから後継OSへのアップグレードは、できない場合があるので注意したい。
<初期製品のアップグレードは絶望的> 2001年に発売が開始されたWindows XPは、販売期間が非常に長かった。家庭向けの製品は、Windows Vistaが登場する2007年に姿を消して行ったが、ショップブランドやオフィス向けの製品は、2010年まで販売されていた。この間にパソコン環境は大きく変化し、後継OSが要求するスペックもかなり上がっている。Windows XPのシステム要件が、233MHz以上のプロセッサと64MB(128MB推奨)のメモリーだったのに対し、最低でも1GHz以上のプロセッサと1GB以上のメモリーを必要とする。中期から後期にかけてのWindows XP機は要件を満たせるかも知れないが、初期の製品をアップグレードするのは絶望的なので、新機種への移行となる。
<アプリケーション、周辺機器への対応> Windows XPで利用していたアプリケーションは、新機種では利用できないかも知れない。アップグレードや代替可能なものはよいが、そうでない場合は、事前に必要なデータを汎用フォーマットに変換しておく必要があるかもしれない。 専用のドライバーソフトを必要とする当時の周辺機器も同様で、新機種では利用できないかも知れないので、事前に対応状況を確認し、代替機を用意しておきたい。シリアルポートやパラレルポート、フロッピーディスクドライブは、現在は標準装備ではなくなっているという点にも注意が必要だ。
こうした事情や予算の問題も絡んでくるため、システムを簡単に移行できない場合がある。やむを得ない事情で移行が間に合わない場合は、次のようなリスクの緩和策をとるようIPAは勧めている。
<リスク緩和策> オフラインでの利用に切り替えられる場合には、Windows XPの使用をオフラインに限定するとともに、USBメモリーなど外部情報媒体の自動実行機能を無効化するなどし、ネットワーク以外からの攻撃リスクを低減するための対策を行う。 オンラインで利用せざるを得ない場合は、サポートが継続しているウイルス対策ソフトやマイクロソフトの無償ツールEMETなど攻撃対策ツールを活用し、攻撃の検知・回避を行う。サポートが継続しているアプリケーションを最新に保ち、サポートが終了したアプリケーションは代替アプリケーションに切り替える。
これらに加え、Windows XPの通常使用には必ずUser(制限つきユーザー)アカウントを使い、Administrator(管理者)アカウントは使わないようにすることを強く推奨する。
(2014/1/31 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】 ・Windows XPのサポート終了に伴う注意喚起(IPA) http://www.ipa.go.jp/about/press/20140129.html
・Windows XP、Office 2003 サポート終了の重要なお知らせ(マイクロソフト) https://www.microsoft.com/ja-jp/windows/lifecycle/xp_eos.aspx
・Windows XP 向けのマイクロソフト マルウェア対策サポート(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2014/01/16/3620688.aspx
・Windows XP を 2014 年 4 月のサポート終了後も使い続けることのリスク(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2013/10/31/3607203.aspx
・Windows XP サポート終了後のセキュリティ~ マルウェア感染率が示すリスク(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2013/11/01/3607489.aspx
・サポート終了後の Windows XP、マルウェア対策ソフトが動いていれば安心?(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2013/12/24/3619258.aspx
・サポート終了後のセキュリティ~ネットに接続しなければ大丈夫?(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2014/01/24/3621314.aspx
・サポート終了後のセキュリティ~危険なサイトにアクセスしなければ大丈夫?(日本のセキュリティチーム) http://blogs.technet.com/b/jpsecurity/archive/2014/01/30/3621737.aspx