インターネットを使うIP電話で知らない間に国際通話が行われ、高額な料金が請求される被害が発生しているとして、総務省などが注意を呼びかけている。一般のご家庭への影響はなかったようだが、この機会に忘れがちなネット接続機器の安全対策に目を向けてみたい。
今回の被害は、企業や組織で使われていたIP電話の交換機が、何らかの方法で外部から操作され、大量の国際発信が行われたらしい。被害にあったユーザー2社を独自に調査したネットエージェントは、交換機がインターネットからアクセスでき、管理用のID/パスワードが初期設定のまま変更されていなかったため不正に操作されたとの報告書を24日に公開した。
これを受けた当該機器の販売元レカムは、これまでの経緯や同社の見解などを翌25日に公表した。同社の発表によると、3月から4月にかけて計74件、5千万円規模の被害が該当製品で発生したという。原因の特定には至っていないが、初期パスワードではないユーザーにも被害が及んでおり、被害発生後にパスワードを変更しても被害が続く事例もあったとのことなので、より深刻な問題があるのかもしれない。
NTT東西の発表によると、IP電話交換機に侵入され設定を変更された手口のほかに、外出先から接続して発信する機能を、第三者に不正利用された手口も確認されているそうだ。
こうしたネット接続機器は、いくつかのポイントを押えておくと、より安全に利用することができる。ルーターやプリンタ、複合機、NAS(ネットワークに接続するストレージ)、テレビ、レコーダーと、身のまわりのさまざまな機器がネット接続に対応している。こうした機器をお使いの方は、この機会に機器のセキュリティチェックを行っていただきたい。
■外部からの接続を遮断する
ネットに接続している機器がインターネットからアクセスできるようになっていると、外部からの侵入やサービスの不正利用を許してしまうことがある。インターネット側からのアクセスが必要な機器以外は、アクセスできないようにしておく。
家庭内で複数の機器をネットに接続する際には、インターネット回線の接続口にルーターと呼ばれる機器を設置し、家庭内のLANとインターネットとを分離するのが一般的だ。ルーターには、外部からのアクセスを遮断するファイアーウォール機能が備わっており、特別な対策をしなくてもインターネット側からのアクセスは遮断されている。
外部からアクセスする必要のある機器に関しては、外部からの接続を特定の機器に中継するようにルーターを設定(ポート開放)したり、外部の中継サーバーを介して接続するよう構成したりといった、特別な措置が必要となる。特に何もしなければ、一定の安全性を保っているので、必要がなければ外部からアクセスする機能を停止しておく。これが、第一に検討すべきポイントだ。
■強固なパスワードで保護する
必要があって外部から接続できるようにした場合には、初期パスワードで簡単に接続できてしまうことのないよう、接続用のパスワードや管理画面のパスワードを忘れずに変更しておく。変更の際には、第三者が推測しやすいものや簡易なパスワードを避け、英数記号を織り交ぜた複雑で長い強固なパスワードを設定する。
■ファームウェアを最新の状態に
機器に組み込まれているソフトウェアをファームウェアという。ファームウェアは、パソコンのOSやアプリなどと同様、セキュリティ上の欠陥が見つかると修正した更新版が提供されることがある。メーカーのサポートページやダウンロードページをこまめにチェックし、最新のファームウェアにアップデートするよう心がけたい。機器によっては、本体に確認や更新を行う機能が用意されていることもある。
■国際通話(発信)規制
IP電話の高額請求の場合には、国際通話(発信)ができないように規制しておく緩和策もとれる。国際電話を利用する予定がなければ、利用できない様にしておくのだ。発信規制は、機器の機能として提供されている場合もあるし、プロバイダが提供していることもある。「So-net フォン」の場合は、2014年11月からこの規制機能を導入しており、国際通話(発信)を利用していたユーザーや事前に利用を申し出たユーザー以外は、初期設定でかけられないようになっている(後から変更可能)。
他社のIP電話でも同様のサービスが利用できるほか、携帯電話会社も発信規制サービスを提供している。不要な方は、万一に備えて申し込んでおくと良いかもしれない。
(2015/06/30 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・第三者によるIP電話等の不正利用に関する注意喚起(総務省)
http://www.soumu.go.jp/menu_kyotsuu/important/kinkyu02_000191.html
・IP電話乗っ取り被害調査結果報告書[PDF](ネットエージェント)
http://www.netagent.co.jp/ipphone/ipphone_hijack2015.pdf
・当社に関する一部報道について(レカム)
http://www.recomm.co.jp/IR/tabid/60/Detail.html?itemid=2555
・第三者による不正な電話利用等の被害にご注意ください(NTT東日本)
http://www.ntt-east.co.jp/info/detail/150612_01.html
・かけた覚えのない国際通話にご注意ください(NTT西日本)
http://www.ntt-west.co.jp/info/support/attention4.html
・So-net フォン『国際通話(発信)』の規制機能導入についてのお知らせ
http://www.so-net.ne.jp/info/2014/op20140701_0024.html