サムスン電子のスマートフォンGalaxy Note 7(日本未発売)で発火事故が相次ぎ、同社は今月2日、製品のリコール(無料の回収・修理)を実施した。発火の原因は、一部製品に使われていたバッテリーの欠陥だったという。
スマホやノートパソコンのバッテリーには、リチウム化合物の+電極と炭素化合物の-電極の間を、リチウムイオンが行き来することで繰り返し充放電が行える、リチウムイオンバッテリーが主に使われている。小型、軽量、高出力、長寿命と利点が多いバッテリーだが、デリケートでエネルギー密度が高い分危険性が高く、発熱や発煙、発火事故が後を絶たない。
最近は、出先で充電できるように「モバイルバッテリー」と呼ばれるバッテリーを内蔵した充電器を持ち歩く方も多く、7月には、東京ディズニーランドで入園客のモバイルバッテリーが発火しショーが一部中止になった。8月には、スカイマークの旅客機内で乗客のモバイルバッテリーから煙が出たため、緊急着陸した。いずれも大事には至らなかったが、こうした事故は製品本体の被害にとどまらず、周囲の物や人、建物などにも被害が拡大してしまうので特に注意が必要だ。
業界関係者によると、バッテリー消費が激しい「ポケモンGO」のおかげで、国内のモバイルバッテリーの売れ行きが好調だそうだが、その一方で、安全性に問題のある粗悪品が輸入販売されるケースが目立つようになったという。
国内で販売される電気製品は、電気用品安全法によって一定の安全性が守られており、安全基準を満たした製品にはPSEマークが付いている。ところがリチウムイオンバッテリーの場合は、規制対象が高密度の製品(体積エネルギー密度400W/L以上)に限定されており、PSEマーク不要の製品が多く、粗悪品が出回りやすい状況になっている。一歩間違うと生命に関わる危険と隣り合わせの存在なので、多少高価でも純正品や信頼できるメーカー品を選ぶようにしたい。
■不良品に注意
事故原因のひとつが、バッテリーやACアダプターの不良だ。信頼できるはずのメーカー品や純正品であっても、時には不良品が混入することがあり、長期間使う製品は劣化してしまうこともある。製品に問題がある場合には、製造元や販売元によるリコールが行われるが、気づかずに対象製品を使い続け事故に至るケースもある。該当製品を使用していないかどうか、メーカーや販売店のホームページ、経済産業省のリコール情報などで確認していただきたい。今年に入ってからリコールされたスマホ、パソコン関連製品で、9月現在、経済産業省のリコール情報に掲載されているものは以下の通り。
<Surface Pro用AC電源コード>
・マイクロソフト
https://www.microsoft.com/surface/ja-jp/support/warranty-service-and-recovery/powercord
<ワールドトラベルアダプタキットに含まれるAC電源アダプター>
・アップル
http://www.apple.com/jp/support/ac-wallplug-adapter/
<ハードディスク用AC電源アダプター>
・アイ・オー・データ機器
http://www.iodata.jp/news/2016/important/hdc2-us.htm
<ノートパソコン用バッテリー>
・東芝
https://dynabook.com/info/20160128.html
・パナソニック
http://askpc.panasonic.co.jp/info/160128.html
・富士通
http://pr.fujitsu.com/jp/news/2015/08/27-1.html
・ソニー
http://www.sony.co.jp/SonyInfo/News/ServiceArea/160302/
・日本HP
http://h50146.www5.hp.com/info/replacement/fy2016/fy16-01.html
<スマートフォンSTREAM X GL07S>
・ソフトバンク(旧EMOBILE)
http://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2016/20160301_02/
・ファーウェイ
http://consumer.huawei.com/jp/press/news/hw-473105.htm
<smartwaysモバイルバッテリー06>
・オール
http://www.oaroar.com/news/pdf/20160401.pdf
このほかに、埼玉西武ライオンズ、大宮アルディージャ、千葉ロッテマリーンズの公式グッズとして販売されていたモバイルバッテリー(コンフィアンサ製造、VOX POP販売)が8月にリコールされている。
・千葉ロッテマリーンズ
http://www.marines.co.jp/news/detail/17813.html
・埼玉西武ライオンズ
http://www.seibulions.jp/news/detail/11797.html
・大宮アルディージャ
http://www.ardija.co.jp/news/detail/10957.html
■寿命や取扱いに注意
バッテリーは、充放電を繰り返しているとやがて寿命を迎える。リチウムイオンバッテリーの充放電は、500回程度といわれているので、毎日充電していると1年半くらいでバッテリーの持ちが半分近くにまで落ち込む。持ちが悪くなったと感じたら、バッテリーの交換時期だ。そのまま使い続けていると、劣化したバッテリーが膨張したり、本体に歪みが生じたりすることもある。
過充電や過放電、高温での使用、短時間で充放電を繰り返すことなどでも劣化が進むので注意しよう。満充電や放電しきった状態での保管、車のポンネットなどの高温になる場所での使用や放置。充電しながらの使用などは避けたい。「ながら充電」を想定したノートパソコンの場合には、充電頻度を低減する機能が用意されていることもあるので、電源オプションを探してみていただきたい。
電源ケーブルは、挿抜を繰り返すとコネクターが摩耗し接触不良の原因になる。乱暴に扱ったり変に力を入れたりすれば、コネクターの変形や破損、断線などが生じ、事故の原因となる。コネクター部分に水分が付着していたり、異物や埃が入り込んでいたりするのも禁物だ。ペットを飼っている方は、バッテリーやケーブルを噛まれないよう注意を払っていただきたい。バッテリーは、デリケートな危険物だということを肝に銘じたい。
(2016/09/29 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・海外やオンラインで販売された「Galaxy Note7」について(サムスン電子)
http://www.samsung.com/jp/article/notice20160914
・スマホ等及びその周辺機器の事故にご注意ください(製品評価技術基盤機構)
http://www.nite.go.jp/jiko/chuikanki/press/2016fy/prs160428.html
・リチウムイオン電池をご使用の際は次のことを必ず守ってください。(電池工業会)
http://www.baj.or.jp/frombaj/03.html
・製品安全ガイド(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/product_safety/index.html
・リコール情報(経済産業省)
http://www.meti.go.jp/product_safety/recall/index.html
・製品事故情報・リコール情報(製品評価技術基盤機構)
http://www.nite.go.jp/jiko/jikojohou/index.html