警察庁は9日、2016年の少年非行、児童虐待等についてとりまとめ、発表した。少年の検挙人員は13年連続で減少したが、児童虐待事件および児童ポルノ事件の検挙件数・人員、被害児童数は、統計を取り始めて以降、最多となった。インターネットを利用したいじめ事件、深刻な被害の増加が懸念される児童ポルノ事件に注目して、この統計を紹介したい。
■インターネットを利用したいじめ事件
2016年にインターネットを利用したいじめが事件として検挙されたものは14件あり、内訳は「脅迫」1件、「名誉棄損」1件、「侮辱」5件、「児童買春・児童ポルノ」7件だった。この年のいじめ事件の総数は149件で、そのうち「脅迫」は3件、「名誉棄損」は1件、「侮辱」は7件、「児童買春・児童ポルノ」は9件である。つまり、これらの罪種のほとんどはインターネットに起因していることがわかる。子どものネット利用にあたっては、「脅迫」「名誉棄損」「侮辱」にあたる書き込みは犯罪であることを、しっかり認識させたい。また、いじめ事件でもっとも多い「児童買春・児童ポルノ」については、それぞれ独立した事件として見たときもインターネットが悪用されて発生する例が多い。
■「児童買春・児童ポルノ」被害増加--コミュニティサイト等を悪用
2016年の「児童ポルノ事件」の検挙件数は2097件で、前年の1938件より159件増加。被害児童数は1313人で、前年より408人増加している。同じく「児童買春事件等」の検挙件数は2371件で前年より75件増加。被害児童数は1814人で、前年より69人増加している。
警察庁は、これら事件の「検挙事例」をいくつか紹介しているが、児童ポルノの事例としては、巧妙に話を持ちかけられた女児が自ら撮った裸の写真を相手に送ってしまったケースが3件、取り上げられている。児童買春の事例では、コミュニティサイトなどを利用したケースが2件、取り上げられている。こうした事例が多発していることが伺える。
■十余年を経ても減少しない「裸の写真を送る少女たち」
同庁が児童ポルノ事件の例として取り上げた3件の概要は次の通り。
・女子高校生に対する児童ポルノ製造事件(京都):2015年12月、ネット掲示板でアイドルグループのコンサートチケットを求めていた女子高校生に、男がチケットと引き換えにと持ちかけ、裸の画像を送信させて児童ポルノを製造。
・女子中学生らに対する児童ポルノ製造事件(北海道):2015年から2016年にかけて、46歳の公務員の男がモデルの写真を使って男子大学生になりすまし、コミュニティサイトで知り合った女子中学生ら6人に裸の画像を送信させ児童ポルノを製造。
・女子小学生に対する児童ポルノ製造事件(兵庫):2016年2月、34歳の会社員の男が女子中学生になりすまし、コミュニティサイトで知り合った女子小学生に、悩みを相談するなどして年齢の近い同性と誤信させ、裸の画像を送信させ児童ポルノを製造。
当通信で「裸の写真を送る少女たち」をシリーズで取り上げ警鐘を鳴らしたのは、携帯電話が普及しつつある2006年だった。十余年が経過してスマートフォンが普及した現在、この事案は減るどころか増加の一途をたどっているようだ。データ化された画像がインターネットに流出すれば取り戻すのは難しい。子どもたちを深刻な被害から守るため、情報モラル教育の徹底をお願いしたい。
(2017/03/10 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:警察庁】
・平成28年における少年非行、児童虐待及び児童の性的搾取等の状況について[PDF]
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/hikoujousei/H28.pdf
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