警察庁生活安全局生活環境課は6日、「平成19年中における生活経済事犯の検挙状況について」の報告の中で、インターネットを利用した知的財産権侵害事犯が増加傾向にあることを明らかにした。
報告によると、生活経済事犯全体での検挙は1万2,197事件、1万5,890人で、いずれも1990年の統計開始以降、最多だった。このうち知的財産権侵害事犯の検挙は、441事件(2006年は493件)、756人(同783人)で前年に比べていずれも減少したが、インターネットを利用した事件の占める割合は増加の傾向を見せている。
偽ブランド事犯等の「商標法違反」は276件で、このうちインターネットを使用した事犯が30.8%(2006年は28.6%)を占めた。海賊版事犯等の「著作権法違反」は137件で、このうちネット利用事犯は54.0%(同53.4%)となっている。知的財産権侵害事犯全体で見ると、ネット利用の事犯は36.3%(2006年)から37.4%(2007年)とわずかながら増加。また、ネット利用事犯の78.8%で、ネットオークションが使われていた。
知的財産権侵害事犯の事例としては、ネットオークションを利用してソフトウェアの海賊版を販売していた事件、携帯電話のサイトを利用して映画やテレビ番組の海賊版DVDを販売していた事件、雑誌連載中の漫画をスキャナで取り込み、ネット上に自動公衆送信していた事件、レンタル掲示板を使って着うた用の楽曲ファイルを配信していた事件などが挙げられている。
知的財産権侵害事犯以外でネットが利用された事例としては、保健衛生事犯として、掲示板を利用して向精神薬リタリンを大量に販売していた事件と、中国から個人輸入した、有効成分を含む偽バイアグラをネットオークションを使って販売していた事件が挙げられている。
「中国」と「偽バイアグラ」は、財務省が5日に発表した「2007年の知的財産権侵害物品の輸入差し止め状況」でもキーワードとなっている。報告によると、2007年の差し止め件数は前年より15.7%多い2万2,661件で、過去最高だった。国別に見ると、中国からの輸入差し止めが1万6,116件で全体の71.1%を占めている。品物別では、医薬品の差し止め点数が著しく増加。偽バイアグラや同様の効果をうたった薬の侵害品は、前年の約23倍にあたる9万6,591錠が差し止められた。また、1件当たりの平均差し止め点数は、インターネットで注文を受けて郵送で少しずつ偽ブランド品を輸入する手口が増加したことにより、前年より4点少ない46点となった。
(2008/03/08 ネットセキュリティニュース)
■ 平成19年中における生活経済事犯の検挙状況について(警察庁)
http://www.npa.go.jp/safetylife/seikan43/h19_seikeijihan.pdf
■ 平成19年の知的財産侵害物品の差止状況等(財務省)
http://www.mof.go.jp/jouhou/kanzei/ka200305a.htm