自ら撮影した裸の写真を送る少女たちが後を絶たないが、幼い娘の裸を売り物にする親たちまでいるとう、恐るべき実態が浮かび上がってきた。
今年6月、兵庫県のパートの女(23歳)と堺市中区の無職の女(20歳)が児童買春・児童ポルノ禁止法違反などの疑いで宮城県警に逮捕された。パートの女は、女児の裸の写真を買い取るという無職の女の依頼に応じ今年1月、当時2歳だった娘の写真を自宅で撮影し10万円の謝礼をもらっていたという。今月12日に仙台地裁で開かれたパートの女の判決公判で、裁判官は、性的虐待と同じ行為であり金を得るなど言語道断とし、懲役1年、執行猶予3年を言い渡した。
自分の娘の裸を売り物にしてしまう主婦の児童ポルノ製造問題は、これに留まらず、その後も次々と摘発が続いた。
・1歳娘の裸を携帯電話で撮影、会社員に販売した主婦書類送検(9/15)
宮城県警少年課と大河原署は9月15日、宮城県柴田郡の主婦(21歳)と、先の堺市中区の無職の女(公判中)を仙台地検に書類送検した。主婦は、当時1歳だった娘の裸を携帯電話で撮影。無職の女がそれを買い取り、大阪府豊中市の男性会社員に販売していたという。
・6歳娘のわいせつ写真を携帯電話で撮影、主婦を逮捕(9/28)
宮城県警大河原署は9月28日、児童ポルノ製造に関わっていた岩手県八幡平市の主婦(28歳)を逮捕した。主婦は、当時6歳だった娘のわいせつな写真を携帯電話で撮影した疑い。
・小1娘の下着姿を撮影、ネットオークションで販売した両親を逮捕(10/29)
愛知県警と石川県警の合同捜査本部は10月29日、名古屋市在住の建設作業員の父親(33歳)と母親(28歳)を逮捕した。容疑は、小学1年の娘(7歳)の下着姿を撮影し、画像を記録したフラッシュメモリー2本をインターネットのオークションサイトで販売した疑い。
・1歳娘、11歳妹の裸を撮影し謝礼を受け取った母親と姉を逮捕(11/16)
宮城県警少年課と大河原署は11月16日、男から謝礼を受け取って実の娘や妹の裸を撮影したとして、東京在住の女2人と撮影した男を逮捕した。逮捕されたのは、足立区のパート従業員の女(31歳)と大田区の飲食店従業員の女(23歳)、東京都北区在住の元会社役員の男(46歳)だ。パート従業員は7月に1歳の娘の裸を、飲食店従業員は昨年12月に11歳の妹の裸を、それぞれ男の自宅で、男に撮影させた容疑だ。女たちは男から謝礼を受け取っていたという。
かつて娘を身売りさせて家族が露命をつないだ時代があったが、デジタル時代は子どもの裸の画像を売るということだろうか。子どもの身は家族とともにあっても、裸の画像がネットに流出するとどこまでも拡散し、永久に残る。長じるにつれ、子どもの傷も家族への不信感も深くなるだろう。冒頭に述べた仙台地裁の判決では、裁判官が母親に対し、わが子を被写体にした児童ポルノ撮影は性的虐待であると厳しく指摘したという。母親はどのような気持ちでこの言葉を受け止めたことだろう。
【急増・深刻化する児童ポルノ被害】
警察庁の「児童ポルノ事犯の送致・被害児童保護状況」によると、昨年1年間の送致件数は676件、送致人員412人、保護児童338人だった。ところが、今年に入って情勢が急に深刻化、6月までの上半期分だけでも送致件数382件(昨年同期300件)で27パーセント増、送致人員289(昨年同期188人)で54パーセント増、被害児童も218人(昨年同期144人)で51パーセント増という具合だ。そのなかに家庭内での児童ポルノという犯罪がどの程度含まれるかは不明だが、増加している恐れは大きい。
【有効な手立ては?】
インターネット関連事業者や民間団体、学識経験者が6月2日に、ネット上での児童ポルノ流通防止策を検討する「児童ポルノ流通防止協議会」設立。また警察庁は全国各地で児童ポルノ対策を実施するとともに、9月15日には被害にあわないための注意や情報提供を呼びかける「NO!! 児童ポルノ」ページを公式サイト内に設けた。また、警視庁は11月19日、児童ポルノ犯罪の取り締まりを強化するため、公式サイト内に「STOP!児童ポルノ」というページを新設すると同時に匿名通報を受け付ける専用電話を開設した。
このように児童ポルノ撲滅のために官民一体となってさまざまな取り組みが展開されているが、家族による性的虐待としての児童ポルノは家庭という密室で行われているため、発見が困難と言われる児童ポルノの中でもさらに発見が難しい面がある。第三者が気づいて通報することが、被害児童を保護するためにも重要だ。
さらにもう一歩踏み込んで、そもそも家族による児童ポルノ撮影という犯罪をどうすれば防ぐことができるのか、考える必要があるだろう。道を踏み外す親・家族に対し、どのような手だてが有効なのか。デジタル時代、ネット時代の新たな課題といえるようだ。
(2009/11/20 ネットセキュリティニュース)
■児童ポルノ事犯の送致・被害児童保護状況(警察庁)
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/statistics.html
■「児童ポルノ流通防止協議会」の発足について(児童ポルノ流通防止協議会)
http://www.iajapan.org/press/20090602-press.html
■NO!! 児童ポルノ
http://www.npa.go.jp/safetylife/syonen/no_cp/
■ STOP!児童ポルノ(警視庁)
https://www.keishicho.metro.tokyo.jp/anket/child_porno.htm