情報処理推進機構(IPA)は6日、2010年12月および2010年1年間のコンピュータウイルスと不正アクセスの届出状況のまとめを発表した。「今月の呼びかけ」では2010年を振り返り、ドライブ・バイ・ダウンロード、騙しのテクニック、スマートフォンの3件を取り上げ、それぞれの脅威の解説と対策方法を示した。また、2011年にもこれら3件の脅威が増すと予測し、スマートフォンでドライブ・バイ・ダウンロード攻撃が増加する可能性などを示唆した。
■2010年12月の届出状況
2010年12月のウイルスの検出数は約2.3万個で、同11月(約3.2万個)から28.8%減少。届出件数は874件で11月(1094件)から20.1%の減少となった。検出数の1位は、W32/Netsky(1.7万個)で、2位はW32/Mydoom(3000個)、3位はW32/Autorun(1000個)だった。
不正プログラムの検知状況は、2010年9月に確認されたような急増事例はなく、同10月以降はほとんど確認できないレベルとなっている。
不正アクセスの届出件数は22件(11月14件)で、そのうち被害があったものは7件(11月7件)。被害内容は、侵入5件、DoS攻撃1件、不正プログラム埋め込み1件。「侵入」被害は、データ窃取1件、外部サイト攻撃ツールを埋め込まれ踏み台として悪用されたもの1件、不正アカウントの作成1件、その他2件。侵入の被害事例として、Webアプリケーションの脆弱性を突かれて不正アクセスされたケース、サーバ設定ミスにより攻撃ツールを埋め込まれ踏み台として悪用されたケースの2件が紹介されている。
12月の相談件数は1536件(11月1692件)で、内容は「ワンクリック不正請求」関連474件(11月483件)、「セキュリティ対策ソフトの押し売り」関連10件(11月18件)、Winny関連4件(11月8件)などだった。
■2010年の年間届出状況
2010年のウイルスの届出数は1万3912件で、2009年の1万6392件から15.1%の減少となった。ウイルス届出数は2005年の5万4174件をピークに、2006年以降は年々減少している。IPAでは、大規模な感染拡大を引き起こす大量メール配信型のウイルスが出現していないことがその原因とみている。
2010年に届出されたウイルスは101種類(前年125種類)で、2010年に初めて届出されたウイルスは5種類(前年9種類)。検出数が多かったのは、上から順に「W32/Netsky」「W32/Mydoom」「W32/Mumu」となっている。
不正アクセスの年間届出数は197件で、2009年の149件から48件(約32%)増加した。不正アクセス届出数は2004年(594件)以降、減少を続けていたが、2010年は増加に転じた。被害があったのは140件(前年107件)で、ホームページの改ざん35件(前年14件)、踏み台として悪用25件(前年7件)が増加し、ファイルの書き換え20件(前年30件)は減少した。
■ドライブ・バイ・ダウンロード、騙しのテクニック、スマートフォン
「今月の呼びかけ」では、「ドライブ・バイ・ダウンロード」「騙しのテクニック」「スマートフォン」の3つを取り上げ、それぞれの脅威の解説と対策方法を示している。
いわゆるガンブラー攻撃にも利用されているドライブ・バイ・ダウンロードは、(1)悪意あるWebサイトへの誘導 (2)正規Webサイト改ざん (3)ウイルス感染 という流れで攻撃が構成されている。IPAは、それぞれが個別に変遷してきているとして、この3要素を個別に解説。被害対策としては、パソコンの OS やアプリケーションなどの脆弱性を解消した上で、有害なWebサイトの閲覧ブロック機能がある統合型ウイルス対策ソフトを最新の状態で使用することが効果的としている。
騙しのテクニックは、従来のスパムメールにくわえ、SNS、Twitter、YouTube など流行のサービスを悪用する手口が多くなっている。たとえばTwitterで、「○○がタダでもらえる」など偽のツイート(つぶやき、投稿)を送り、記載したリンクをクリックさせて悪意あるサイトに誘導する、「短縮 URL」サービスを悪用して悪意あるサイトに誘導するなど。被害予防としては、知り合いからのツイートやメッセージ、メールであっても安易に添付ファイルを開いたり、URLをクリックしたりしないこと。短縮 URL については、本来の URL に変換して表示するツールやサービスを利用して元の URL を確認することをすすめている。
携帯電話の一種として普及が進むスマートフォンについては、OS に脆弱性が見つかったり、感染するウイルスが確認されたりしている。感染予防には脆弱性の解消が最も重要で、OS およびアプリケーションは常に最新の状態を保ち、インストールするアプリケーションは必ず信頼できるサイトから入手することが重要としている。
IPAは、これら3つの脅威が2011年も増大すると予測。ドライブ・バイ・ダウンロードについては、SEO ポイズニング(検索結果の上位に悪意あるWebサイトへのリンクを紛れ込ませる手口)を多用する傾向が強まる。騙しのテクニックでは、SNS など流行のサービスを悪用する傾向が続く。スマートフォンでは、パソコンと同様に脆弱性を悪用したドライブ・バイ・ダウンロード攻撃が多く行われ、アドレス帳からの個人情報漏えいや金銭詐取など甚大な被害が発生する可能性も考えられるとしている。
(2011/01/06 ネットセキュリティニュース)
【関連URL:IPA】
・コンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況[12月分および2010年年間]について
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2011/01outline.html
・2010年のコンピュータウイルス届出状況[PDF]
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2011/documents/2010all-vir.pdf
・2010年のコンピュータ不正アクセス届出状況[PDF]
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2011/documents/2010all-cra.pdf