東北経済産業局は7日、パソコンを使った内職を勧誘するにあたり、「初心者でも簡単に始められる」「無料の研修制度があり、費用は一切必要ありません」などと虚偽の説明をして高額の教材などを購入させていたとして、宮城県仙台市の会社経営者と法人3社に対し、今月8日から来年6月7日までの6か月間、業務の一部停止を命じた。
不実告知、勧誘目的の不明示、虚偽広告、契約書面の記載不備などが特定商取引法上の違反にあたるため、消費者庁長官の権限委任を受けた同局の局長が実施した。
消費者庁と同局の発表によると、処分対象となったのは日本教育出版、イプシロン、ドリームネットの3社(いずれも住所は仙台市)と、その経営者の男性(49歳)。男性社長はホームページでイラストやロゴマークを作る内職スタッフを募集し、応募してきた人に「研修が必要」としてCADソフトやその受講教材などを40万円で購入させていた。
実際には内職の紹介は行われず、購入の解約にも応じていなかった。報道等によると、被害者は2007年4月から今年年8月までの間に約270人。ほとんどが女性で、被害総額は約1億円にのぼるという。
同局は行政処分の発表文書に被害者がどのように騙されたかの具体例を示す「事例」を5件、あげている。在宅でできる仕事を求める女性の真面目さや向上心を逆手にとり、巧みに誘導していく”騙しのプロセス”が読み取れる。
■勧誘の手口:ホームページでうたっていた甘言と「評判」
事例5件のうち4件で、被害者は「在宅ワーク」などのキーワード検索で男性社長が運営するサイトを見つけていた。1件はネットで「デザインの内職」という広告を見て興味をもち、広告をクリックして当該サイトに飛んでいる。
サイトには「ゼロ円から仕事が始められる」「仕事の内容は簡単なイラストの修正」「1枚仕上げると800円から千円の報酬」「無料の研修制度があります」「頑張れば頑張っただけ収入になる」などの甘言が並べられていた。事例では投稿サイトで会社の評判をチェックした人もいる。「良い会社です」という内容の書き込みがあり、安心できる会社だと思ってしまったという。被害者はこれらの言葉にひかれ、当該サイトから個人情報を入力して資料を請求。次の「電話面接」に進んでいる。
■電話面接後、いったんは不採用として研修費用を提示
電話面接後は残念ながら不採用という連絡がある。しかし、「別枠の○○スタッフとしてなら採用できるが、研修を受講し合格する必要がある」「合格したなら研修費用の40万円は会社が負担するので、それまで立替払いすることになる」「研修は2か月で修了できる」などと電話で勧誘される。ここで頑張れば仕事が得られる、研修を終えれば費用も返ってくるという誘いに動かされて了承すると、内職の業務委託契約を交わす段階に進んでしまう。クレジットカード払いによる40万円の売買契約で、契約相手は教材販売会社だ。
■研修は終了が難しい内容、しかし解約は困難
早く仕事を得て収入を得たい被害者は、一生懸命に研修に取り組むが、とうてい2か月では修了できない内容になっている。ここで「勧誘時の説明と違う」と気づき、解約を申し出ると、多くの場合、当の会社は連絡不能となっている。教材販売会社は、教材が未開封の場合のみ解約可能と主張し、開封済みであることを理由に返金を拒否する。
こうした内職商法による被害は、下欄の関連記事にもみるように、全国各地で起きている。甘言による仕事の誘いには十分注意していただきたい。
(2010/12/09 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・特定商取引法に基づく行政処分について[PDF](消費者庁)
http://www.caa.go.jp/trade/pdf/101207kouhyou.pdf
・特定商取引法違反の業務提供誘引販売業者(4事業者)
に対する取引停止命令(6か月)について[PDF](経済産業省東北経済産業局)
http://www.tohoku.meti.go.jp/s_syohisha/topics/pdf/101207.pdf
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