楽天の偽サイトが2000件以上出現し、偽の注文確認メールも出回っているとの記事が先週、ネットニュースに掲載され話題になった。腑に落ちない点が多々あったので、実態を調査してみた。
各社の記事がソースにしていたのは、タイムリーな情報を提供するニュースリリースやお知らせではなく、Q&Aのページだった。この種のページは、日々更新されてはいるものの、新旧の内容が渾然一体となっており、必ずしも現状に即した内容とは限らない。蓄積された情報なので、過去のことが含まれていることも多い。
ニュースソースとなっていた「楽天を偽装したサイト等にご注意ください」もまた、新旧の情報が混在しており、フィッシング、通販詐欺サイト、マルウェア(ウイルス)メール、架空請求メールなど、同社に関連する様々な脅威がひとつにまとめたものだった。その中で最近の更新された部分は、マルウェアを添付した偽装メール(「invoice_10_02_2015.rtf」というファイルが添付されたメール)の再襲と、「偽装したサイトを誤って利用しないために」の追加くらいで、ほかは昨年の古い内容だったりする。このページは、頻繁に更新される別ページの「楽天を装ったWEBサイト」一覧と更新日が連動しているため、古い内容まで現在のことと勘違いしてしまったようだ。
■偽サイトの実態と現状
本通信でも、古い内容を記事にしていたので、現状がどうなっているのかを調査してみた。調査のベースにしたのは、「楽天を装ったWEBサイト」一覧の2月25日付のものだ。先に結論を述べておくと、下記参照記事にある当時の状況と大差はない。本物そっくりの偽サイトに誘導するフィッシングは、ここしばらくは行われておらず、プロキシやゲートウェイと呼ばれる中継サイト経由で楽天市場にアクセスした場合には警告が出るようになり、本物を偽物と誤認する可能性も低減された。
一覧に掲載されているURLは、過去にユーザーから報告されたものとあり、偽サイトであることが確認されたサイトのリストではないことが伺える。実際、中継サイト経由で本物のサイトを閲覧したものや、誘導先のサイトに転送するリダイレクタ、誘導先を見えないフレーム内に表示するページなどもあり、中にはWebページをコピーするサービス「ウェブ魚拓」にコピーされたものも含まれている。
2月25日付の一覧2587件(注記*1)から、アクセスできないものや無関係なものを除外し、日本語の偽サイトらしきものをホスティングしている実質的なものだけに絞ると、有効なサイトは363件となった。いずれも、商品を送らなかったり、偽物を送り付ける通販詐欺サイトと見られるもので、17件に楽天の名称やロゴが“目立つ形で”使用されていた。ただしその中の6件は、「楽天ブランドコピー」と銘打つ、偽ブランド品を堂々(?)と販売するタイプの詐欺サイトだ。方向性はやや異なるが、検索エンジンを使うと、このような偽物の販売を売りにするサイトが大量にヒットする。
大半を占めるその他の偽サイトの実態は、サイトの構築に楽天市場のショップの商品写真や説明などのコンテンツを盗用している通販詐欺サイトである。本物のコンテンツをコピーする際に、ロゴや社名や店名、サービス名なども一緒にコピーしてしまったケースだ。ロゴ等を目立つ形で使用しているところも含め、この手のサイトは、結果的にそうなってしまったというのが実情ではないだろうか。実在するショップに成りすまそうという感じはなく、どちらかというと、出所の分かるような情報を削除しようとしているように見える。
■増殖を続ける正規サイトのコピー
国内のユーザーを狙う日本語の通販詐欺サイトは、有名ブランド品を激安で販売するタイプが2012年秋頃から大量に開設されるようになった、翌年の夏頃からは、日用品や台所用品、釣り具、自転車など、ありとあらゆるジャンルの商品を扱う詐欺サイトの量産が始まり、被害がますます広がっていった。こうした詐欺サイトが商品写真や説明の収集場所としたのが、さまざまなショップの集うショッピングモールだ。同じ構造で管理されている大量の商品は、自動収集で詐欺サイトを量産するのに向いており、シーズンに合わせたキャンペーンも勝手に展開される。価格設定をコピー元よりも安くすることにより、それなりの集客を期待しているのだ。
■「.tokyo」ドメインで話題の詐欺サイト
そんなサイトの中には、「.tokyo」ドメインを使用していることで話題になった詐欺サイトが、各社の報道に先駆けて掲載されていた。このサイトの見た目は、各社の記事やフィルタリングでおなじみのデジタルアーツ社のリリースで確認できる。大量に存在する詐欺サイトは、フィッシングなどに使われる本物そっくりの偽のサイトではなく、このような見てくれのものばかりである。
デジタルアーツの記事では、改ざんされた正規サイト上に、この詐欺サイトが多数設置されているようにも読める部分があるが、実際には、詐欺サイト本体が改ざんサイト上に設置されているわけではない。改ざんされたサイト上には、この「.tokyo」ドメインの詐欺サイトを見えないフレーム内に開くWebページが、大量に設置されていた。ネット上には、同様のページを数千個単位で置いたサイトがいくつもあり、タダでも多い詐欺サイトがより多く見え、検索にもヒットしやすくなっている。
なお、このショップのロゴを盗用した詐欺サイトは、正月に「.com」ドメインでも作成されており、同店からも注意喚起が出されていた。
■詐欺サイトを見分ける方法
デジタルアーツの記事では、被害にあわないための対策として、以下のような詐欺サイトの一般的な見分け方を紹介している。
・記載されている日本語がおかしい
・中国語の簡体語等の漢字のフォントが含まれている
・メールアドレスにフリーメールを使っている
・会社概要の説明がおかしい
・電話番号を記載していない
・金額があきらかに安すぎる
・支払い方法が銀行振込であり、個人名義である
これらチェック項目は、それぞれに例外が存在するので、全項目をチェックし綜合的に判断する必要がある。今回、最近の詐欺サイトを改めて調査したところ、ほとんどの詐欺サイトに共通する、2つの特徴が浮かび上がってきた。
<SSLに対応していない>
今回調査したサイトでは、個人情報の入力ページがSSL暗号化通信になっているところがひとつもなかった。入力フォームで錠マークが表示されない場合には、疑った方がよい。
SSLへの対応は、手間やコストが余分にかかる関係から、詐欺サイトだけでなく、正規サイトでさえも未対応で済ませてしまっているところがある。しかし近年は、SSL対応のハードルは非常に低くなっており、詐欺サイトのSSL化は時間の問題かも知れない。また、正規のクレジットカード決済代行業者を使う偽ブランド品販売サイトのように、SSLに対応した業者のサイトで決済するようになっているところもある。SSL未対応は怪しいサイトだが、SSL対応だから安心できるわけではない。
<電話連絡できない>
もうひとつの特徴が電話番号だ。多くの詐欺サイトは、「会社概要」や「特定商取引法に関する表示」の記載がいい加減で、実在する正確な住所を番地や部屋番号まで記載しているところが少ない。電話番号を記載したところは数件しかなく、実際に電話をかけてみると、通じなかったりでたらめだったりする。
架空請求やワンクリック詐欺では、相手に電話をかけさせてから騙す手口が流行っているが、通販詐欺サイトでそこまでやるところはまだないようだ。初めて利用する際に電話をかけて実在確認するよう心がければ、今なら高確率で詐欺サイトを回避できるだろう。
なお、詐欺サイトが掲載している住所や氏名、電話番号は、他のサイトからコピーして来たものだったり、詐欺サイトに騙されて申し込んでしまった人のものだったりすることもあるので、電話で確認する際には、くれぐれも相手に失礼のないようお願いしたい。
【注*1】2月20日付の記事で一覧の件数を約2700件としているのは誤りで、その後に件数が減ったわけではない。2月20日時点の正確な掲載件数は2574件で、23日に5件、24日に3件、25日に5件の計13件がその後に追加されている。
(2015/02/27 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・楽天を偽装したサイト等にご注意ください
http://ichiba.faq.rakuten.co.jp/app/answers/detail/a_id/15818
・楽天や楽天ショップを装ったメールにご注意ください
http://ichiba.faq.rakuten.co.jp/app/answers/detail/a_id/22669
・「invoice」というファイルが添付されたメールにご注意ください
http://ichiba.faq.rakuten.co.jp/app/answers/detail/a_id/26504
・詐欺サイトの見分け方のポイントとは?(デジタルアーツ)
http://www.daj.jp/news/150223_01/
・レディースオフの偽サイトにご注意ください。(レディースオフ)
http://ameblo.jp/ladysoff2/entry-11980620403.html