ブラウザの画面に不当な請求画面を表示し続け、問合せ先に電話をかけさせようとする新手のワンクリック詐欺が出現したとして、シマンテックは今月13日、同社の公式ブログで注意を促した。問題の詐欺サイトは、それと前後していったん閉鎖されたようだが、先週から再稼働しているので注意が必要だ。
シマンテックのブログによると、インターネットでアダルト関連のコンテンツを検索したり、スパムメール内のリンクをクリックしたりすると、このワンクリック詐欺に引っかかってしまうらしい。アダルトサイトで特定の動画の画像をタップすると、この詐欺をホストする別のWebサイトにリダイレクトされるという。
編集部で確認できたのは、このリダイレクト先のWebサイトのみで、同じバングラデシュのサーバーに割り当てた、5種類のドメインが見つかっている。これらは、昨年11月から今月にかけて取得されており、11月中旬頃には、すでにバングラデシュの別のサーバーで営業していたとみられる。
■アクセスするだけでブラクラ被害に~「連絡させようとする」罠に注意
この詐欺サイトは、サイト自体が登録完了ページになっている悪質なもので、アクセスするだけで、えんえんと処理を続けるJavaScriptが実行される。いわゆるブラクラ(ブラウザクラッシャー)と呼ばれるもので、まずは、9万9800円の料金、会員ID、問合せ先の電話番号などを記載したポップアップウィンドウを表示する。[OK]ボタンを押してポップアップを閉じると、ダイヤラを起動して指定した電話番号に「186」付きで電話をかけさせようとする。「186」は、発信者番号が非通知設定でも通知するかけ方だ。
ダイヤラを終了するとブラウザに戻って来るのだが、先のポップアップが1秒おきに表示するようになっているため再表示される。ポップアップ→ダイヤラ→ポップアップをえんえんと繰り返すようになっている。ポップアップウィンドウのメッセージには、誤作動の場合は、24時間以内に登録削除へ連絡するよう書かれており、24時間経過後は「誤作動登録の場合でもご清算頂きます」というでたらめなことをいって、電話をかけさせようとする。
このように連絡させようとするのが、最近の架空請求や不当請求の常套手段だ。困って電話をかけて来るユーザーを狙い、お金をだまし取ろうとしているので、絶対に自分から連絡してはいけない。心配な方や連絡してしまった方、支払ってしまった方は、最寄りの消費生活センターや警察に相談していただきたい。なお、検索サイトで「消費者センター」などを検索すると、公的機関を思わせるような事業者の広告が表示されるので、こちらも間違えないよう注意していただきたい。ネット上には、困惑するユーザーを狙う罠が、あちらこちらにある。
■ブラクラへの対処方法
マルウェア感染と違い、ブラクラは、パソコンやスマートフォン本体に継続的な被害をもたらすものではない。そのWebページを開いている間のみ影響を受けるので、そのページを閉じてしまえば問題は解決する。初めて遭遇した方は、パニックになってしまうかもしれないが、システムやブラウザが乗っ取られてしまったわけではないので、冷静に対処していただきたい。操作のポイントは2点。何らかの方法でブラウザを終了することと、同じページを再び開かない様にすることだ/
(1) ブラウザの終了方法
以下の方法を試し、処理を終了できなくなってしまったページやブラウザを閉じることによって、ブラクラを終了させることができる。
・ブラウザの終了を試みる
ブラウザが操作できる場合ば、ブラウザを閉じる。表示しているページのタブも操作できる場合には、先にタブを閉じてからブラウザを閉じる。タブを閉じることができれば、それ以上の作業は特に必要ないが、タブを閉じずに終了した場合は、(2) の「ページの再表示回避方法」が必要になるかもしれない。
・ブラウザの強制終了を試みる
ブラウザが操作できない場合には、ブラウザの強制終了を試みる。パソコン環境ならば、タスクマネージャを使うと強制終了できる。
Android端末の場合は、ホームキーが有効ならば、キーを押してホームに戻ると他の操作が行えるようになる。履歴キー(最近使ったアプリ表示キー)が利用できる場合には、押して最近使ったアプリ一覧を表示し、ブラウザを右方向か左方向にスワイプすると終了する。履歴キーが利用できない場合は、[アプリの管理]や[設定]→[アプリ]で使用していたブラウザをタップし、[強制停止]を実行すると終了する。
iPhoneなどのiOS端末の場合は、ホームボタンを押してホームに戻ると、他の操作が行えるようになる。ホームボタンを素早く2回押すと起動中のアプリが表示されるので、ブラウザを上方向にスワイプすると終了する。
・本体の再起動を試みる
操作を受け付けずブラウザの強制終了が行えない場合には、本体の再起動で対処する。再起動は、システムやアプリなどを稼働したまま消灯するスリープとは違い、いったん全てを終了してから、システムを起動しなおすことだ。パソコン、携帯端末ともに、たいていは電源ボタンの長押しで、再起動や電源をオフにすることができる。操作は、再起動でも、電源をオフにしてから再びオンにするでも、どちらでもかまわない。
(2) ページの再表示回避方法
ブラウザの多くは、標準または設定により、起動時に以前表示していたページを再表示するようになっている。このようなブラウザは、起動すると再びブラクラページを開いてしまうので、再表示しないように対処しておく必要がある。
・ブラウザの設定で回避する
ブラウザを起動しないで設定の変更が行える場合には、設定変更で対処できるかも知れない。今回のブラクラは、JavaScriptを使用して処理の繰り返しを行っているので、JavaScriptを無効にすれば、同じページを表示してもポップアップは表示されない。例えば、iOS端末で標準ブラウザの「Safari」を使用していた場合には、この方法で回避できる。[設定]→[Safari]→[詳細]と進み、[JavaScript]をオフにする。Safariを起動してもブラクラは発動しないので、問題のページを閉じることができる。
使用していたブラウザが、終了時のページを再表示しないように設定できる場合には、再表示を無効にして起動すれば、ブラクラページを再表示することなく、ブラウザを起動できる。
・キャッシュを消去する
Android端末のブラウザのように、ブラウザを起動せずに設定変更が行えない場合には、キャッシュを消去する方法がお勧めだ。キャッシュは、閲覧したページの内容を一時保存したもので、キャッシュがなくインターネットにも接続できなければ、ブラウザは閲覧したページを再表示することができなくなる。
先のブラウザの強制終了の手順で、ブラウザを終了させた後、[キャッシュを消去]を実行すると、Android端末のブラウザのキャッシュが消える。[設定]から[データ通信]や[Wi-Fi]をオフにし、インターネットにアクセスできない状態でブラウザを起動する。ブラクラページは表示されないので、ページを閉じたり設定を変更したりすることができる。
・アプリのデータやアプリを消去する
キャッシュが消去できない場合には、アプリの管理データの消去を、それもできない場合には、アプリの消去→再インストールを検討する。アプリの管理データを消去すると、開いていたページの情報がなくなるので、ブラクラページは再表示されなくなる。ただし、設定情報や閲覧履歴、クッキーなども全て消去されてしまうようだと、アプリを再インストールするのと、ほとんど変わらなくなってしまう。
(2015/01/30 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・スマートフォンのブラウザをロックするように進化したワンクリック詐欺(シマンテック)
http://www.symantec.com/connect/ja/blogs-369
・全国の消費生活センター等(国民生活センター)
http://www.kokusen.go.jp/map/index.html