編集部では、飛来するメールやWeb上の情報をもとに、主に国内のブランドや国内でホストされているフィッシングサイトについて観測を行っている。国内に関係するフィッシングサイトは毎月100件前後あるが、2月はやや少な目で現時点では60件を超えたところ。そんな中から、今月目についたフィッシングと、カウントには含んでいないが国内のユーザーにも影響のあったフィッシングを、いくつかご紹介する。
■オンラインゲーム「World of Warcraft」の偽サイト
フィッシングのターゲットは銀行やクレジットカードばかりではなく、ポータルサイトやメールサービス、SNSなど多岐におよぶ。オンラインゲームもそのひとつで、特に昨年末からは、World of Warcraft(WoW)の偽サイトが大量に出没している。
このWoWの偽サイトが、今月上旬に相次ぎ3件、国内でホストされているのが見つかった。下記エフセキュアのブログで報告されているものとは若干異なるが、いずれも「worldofwarcraft」という綴りを入れた紛らわしいドメイン名を使用。ホストしているサーバーには、プロバイダが提供しているアクセス回線のIPアドレスが使われており、ウイルス感染などで乗っ取られたユーザーのパソコンが悪用されたものと見られる。ウイルス感染は、自身が被害を受けるだけでなく、周囲にも災いをまき散らしてしまうことがあるのだ。
・worldrofwarcraft.com(エフセキュアブログ)
http://blog.f-secure.jp/archives/50347159.html
■クレジットカード会社を装うフィッシング
今月はフィッシング対策協議会から、VISAとMasterCardのフィッシングの注意を呼び掛ける緊急情報が出された。本通信でも採り上げたこれらのフィッシングは、英語圏のユーザーを狙ったものだが、国内にも偽サイトに誘導するフィッシングメールが大量に舞い込んできた。
このうちのVISAの偽サイトの方は、ZeuS/Zbot系のボットネットを使ったもの。ボットに感染したユーザーのパソコンをWebサーバーにし、次々に切り替えながらフィッシングサイトをホストさせる、「Fast-Flux」と呼ばれる手法を使ったフィッシングだ。このボットネットには国内の感染パソコンが1~2台、連日のように参加しており、今月はVISAのほかにもUSAAやBlogger、Facebookを装うフィッシングサイトのホストに一役かっていた。
このボットネットでは、アカウント情報の盗み出しや感染パソコンのボット化を狙ったウイルス配布も並行して行われており、今月はIRSやFlashPlayerのアップデートを装うウイルス攻撃を観測。先のFacebookのフィッシングにも、ウイルス感染を狙った脆弱性攻撃とみられるリンクが埋め込まれていた(確認時には攻撃サイトが停止していたためウイルスの投下は未確認)。
ZeuS/Zbot系のウイルスメールは、国内にも相当な数が舞い込んでくるのだが、25日に公開されたIBMのレポートによれば、国内の感染数(ウイルスのダウンロード数)は月数件程度とかなり少ない。同社はその理由として、SPAMフィルターやウイルス対策ソフトが不審なメールを防いでいることと、不審な英語メールをクリックするユーザーが少ないのではないかと推察している。
・VISAを騙るフィッシング(フィッシング対策協議会)
http://www.antiphishing.jp/alert/alert1043.html
・MasterCard(マスターカード)を騙るフィッシング(フィッシング対策協議会)
http://www.antiphishing.jp/alert/alert1046.html
・東京SOCでのZeus-Zbot検知状況(IBM)
http://www.ibm.com/services/jp/index.wss/consultantpov/secpriv/b1334118?cntxt=a1010214
(2010/02/26 ネットセキュリティニュース)