年末年始の長期休暇に備え、セキュリティ機関などが注意を呼びかけている。休暇中は、インターネットを利用する時間が増えたり、旅行先や帰省先など普段とは異なる環境で利用したりすることも多い。思わぬトラブルに巻き込まれないよう、いつも以上の注意を払っていただきたい。
JPCERTコーディネーションセンター(JPCERT/CC)やIPA(情報処理推進機構)から出されている年末年始に向けた注意喚起については、末尾にURLを記載しておくのでぜひ参照しておいていただきたい。ここでは、最近の状況から見た一般ユーザー向けの注意点をまとめておく。
■マルウェア感染に注意
マルウェア(ウイルス)は、メールやWebサイト、SNS、ブログなどさまざまな経路を通じてユーザーのパソコンに侵入する。活動するためには、自身を実行しなければならないが、その手段として脆弱性を悪用して勝手に実行してしまう手口と、ユーザーをだまして実行させる手口とが使われる。
(1)ソフトウェアの脆弱性を突いて自動的に実行する
システムやブラウザ、プラグインなどのソフトウェアに脆弱性(欠陥)があると、ソフトウェアが異常な動作をしてしまい、送り込んだマルウェアを自動実行できることがある。インターネットの利用中に特に注意しなければいけないのが、この種の脆弱性の悪用だ。脆弱性攻撃は、改ざんされた正規サイトや広告経由で行われることもあるため、どんなに注意深く行動していても、攻撃されてしまう。攻撃を受けても大丈夫なように対策しておく必要がある。
システムなどに脆弱性が見つかると、それを修正した最新版やアップデート用のプログラム(パッチ)が配布される。アップデートを怠らず、常に最新の状態で使うよう心がければ、Webサイトの閲覧中などに知らない間にマルウェアに感染してしまうようなことはほとんどなくなる。
普段使用しているパソコンはもちろん、帰省した際には実家のパソコンについても、アップデートが適切に実施されているかどうかを確認したい。自動更新を設定してあっても、使用時に最新の状態に更新されているとは限らない。しばらく使用していなかった実家のパソコンを更新前に使用してしまうことのないよう、起動後直ちに手動で更新していただきたい。
WindowsのシステムやOffice製品は「Windows Update」から、ストアアプリは「ストア」の「アプリの更新プログラム」から。MacのシステムとMac App Storeのアプリは、「App Store」の「アップデート」から、直ちに最新の状態にアップデートできる。
脆弱性が悪用されることの多いAdobe Reader、Adobe Flash Player、JRE(Java Runtime Environment:Java実行環境)を使用している場合には、それぞれの最新版を使用しているかどうかを確認する。
Adobe Readerは、[ヘルプ]メニューの[アップデートの有無をチェック]で、Flash PlayerとJREは、Windowsの「コントロールパネル」やMacの「システム環境設定」のそれぞれのアイコン、もしくは下記バージョン確認ページで最新版のチェックとアップデートが行える。
・Flash Playerのバージョン確認(アドビ)
http://www.adobe.com/jp/software/flash/about/
・Java のバージョン確認(オラクル)
http://www.java.com/ja/download/installed.jsp
(2) ユーザー自身が実行する
もうひとつの手口が、ユーザーをだまして実行させる方法だ。攻撃者はあらゆる手段を使い、言葉巧みに実行させようと誘導するので、ネットの利用中やメールの添付ファイルを開く際には、くれぐれも注意していただきたい。何らかの警告が出た場合には、それ以上先に進まないようにするのが鉄則だ。中には、解決手段を提供するように見せかけてクリックさせたり、電話をかけるよう促したりするのもあるので注意が必要だ。
有用なアプリや著名なアプリ、アプリのアップデートなどに見せかける手口も多く、中には、本物のアプリにマルウェアを仕込んで再配布しているケースもある。公式サイトで配布している信用できるアプリ以外は、絶対にインストールしないように注意したい。
■「アプリ連携」に注意
SNSなどのオンラインサービスの中には、他のサービスやアプリと機能を連携したり、認証機能を利用したりできるようにしているところがある。うまく使うと便利で有意義な機能なのだが、悪用事例も多く、広告などを勝手に投稿されたり、登録した連絡先を抜き取られたりといった被害も後を絶たない。
連携時には、見慣れた公式サイトの本物のログインページや確認ページに移動し、どういう権限を許可するのかを確認したうえで、ユーザー自身が許可を与える仕組みになっている。ところが、ユーザー自身が実行してしまうマルウェアと同様、よく読まずに、あるいは相手の悪意に気付かずに、承認してしまう人が相当数いるようだ。信用できることが分かっているアプリ以外は、絶対に連携しないよう注意していただきたい。
誤って連携してしまった場合には、被害が広がらないように速やかに連携を解除し、必要に応じて告知するなどしていただきたい。アプリの連携解除は、連携機能を提供するサービス側の管理ページで行える。
■公衆回線・端末に注意
休暇中は、ネットカフェやホテルの端末を使ってインターネットにアクセスしたり、公衆無線LANやホテルのLANなどのアクセス回線を使用したりすることもあるだろう。自分が管理していない端末を利用する場合には、何が仕掛けられているか分からないので、サービスにログインしたり、クレジットカード情報を入力したりといった行為は慎んでいただきたい。
自分が管理していない回線は、常に盗聴されている可能性を考慮しよう。SSL/TSL暗号化通信やVPNサービスを使った接続以外では、やり取りしている内容が第三者に盗聴されているおそれがあるので、サービスにログインしたり、クレジットカード情報を入力したりしてはいけない。
SSL/TSL接続時には、接続先が本物のサイトであることを必ず確認すること。正しい運営者名が表示されるか、URLが正しい状態でエラーなくSSL/TSL接続できれば、接続先は本物だ。それ以外の場合は、接続先が偽物か、通信回線が盗聴されている可能性が高い。
■架空請求に注意
過去最悪だった昨年の架空請求被害が、今年も改善されぬまま続いている。10末までの被害件数3,180件(既遂3,045件)は、すでに昨年1年間の総件数3,304件(既遂3,063件)を突破しており、被害額も過去最悪だった昨年1年間の総額175億8千万円に迫る143億7千万円となっている。
インターネットネットがらみの架空請求の手口は、主にメールによる架空請求と、アダルトサイトのクリック詐欺だ。
メールによる架空請求は、有料サイトの利用料金などの名目で架空の請求を行い、現金をだまし取ろうとするもの。サイトの運営会社からの依頼などと称した、よく分からない請求内容のメールが突然届き、支払わないと調査を開始する、法的手段をとるなどの文言で不安をあおり、早急に電話するよう誘導する。 こうした債権の回収を代行できるのは、弁護士と法務大臣の許可を受けた債権回収会社だけだ。通知がメールで来ることは無く、アダルトサイトや出会い系サイトなどの利用料を請求する債権回収会社もない。情報サイトなどと書かれた未納の料金を請求するメールは、全て架空請求なので、あわてて連絡したりせず、無視していただきたい。
クリック詐欺は、無料のアダルトサイトなどを見ようとクリックして行くと、突然「登録完了しました」という画面になり、高額な料金を請求するもの。電話やメールで連絡させようとするので、メールによる架空請求同様、連絡せずに無視していただきたい。誤登録時のキャンセル方法などという、すがりたくなるようなメニューを用意しているところもあるが、これも連絡させるための手口なので、真に受けないよう注意したい。あらゆる手を使って連絡するように仕向け、連絡してきたユーザーを言葉巧みにだますのが、最近主流の架空請求なのだ。
■フィッシングに注意
国内のオンラインサービスを装い、ID/パスワードなどをだまし取ろうとするフィッシングの大量発生が続いている。執拗にくりかえされたオンラインゲームのフィッシングは、ここに来てお休みが続いているようだが、オンラインバンキングのフィッシングが、ターゲットを広げながら攻撃を続けている。偽サイトへの誘導には、メールとSMSとが使われており、メールのフィッシングに関しては、休暇期間中も引き続き行われる可能性が高い。休暇中は、届け出窓口が機能しないこともあるため、偽サイトが長期間稼働を続けることも多い。アカウントの確認や認証、更新などと称してリンクをクリックさせようとするメールには、くれぐれもだまされないよう注意していただきたい。
(2015/12/25 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・長期休暇における情報セキュリティ対策(IPA)
https://www.ipa.go.jp/security/measures/vacation.html
・冬期の長期休暇に備えて(JPCERT/CC)
https://www.jpcert.or.jp/pr/2015/pr150006.html