編集部では、飛来するメールやWeb上の情報を元に、国内のブランドや国内でホストされているフィッシングサイトについて観測を行っている。2月に観測した日本国内に関係するフィッシングサイトは、1月から31件少ない43件だった。
43件のうち、偽サイト本体が設置されていたものは33件。残り10件は、他所に設置した偽サイトにリダイレクトする中継サイトとして使われた。悪用されたサーバーは、不正アクセスを受けた一般のWebサイトとみられるものが39件。ホスティングサービスの悪用が4件。
悪用されたブランドは、PayPal(8件)、Bradesco(5件)、CartaSi(5件)、Santander(4件)、ほか計17ブランド。国内関連は、ゆうちょ銀行(2件)のみだった。Yahoo! JAPANをかたるフィッシングメールの報告はあったが、サイトは確認できなかった。
■国内ユーザーを狙うフィッシングが大幅減
編集部が行っているフィッシングサイトの調査では、国内のユーザーを標的とした偽サイト(国内ブランドや日本語の偽サイト)、国内のサーバーやユーザーのパソコンを使用した偽サイト、JPドメインの海外サーバーを使用した偽サイトを集計している。2月は、この中の国内のユーザーを標的とした偽サイトが、ほとんど観測されなかったため、件数の大幅な減少となった。フィッシング対策協議会の月例報告も同様の傾向を示しており、2月の報告件数は前月から110件減少の9件、フィッシングサイトのURL件数は33件減少の7件となっている。
一方、国内のサーバーなどを使って開設される偽サイトについては、1月の44件に対し2月は41件と微減にとどまっている。悪用されるサーバーの多くは、不正アクセスを受けた一般のWebサイトが占めており、2月は41件中39件が、1月は44件中38件がクラックされた国内の一般サイトだった。不正アクセスの手段として昨秋から特に目立っているのが、ブログシステム「WordPress」の脆弱性を突いたもの。2月も39件中13件(1月は38件中7件)が、WordPressの脆弱性攻撃によるものと見られる。
不正アクセスを受けた国内の一般サイトに設置される偽サイトは、ほとんどが国外のユーザーを標的としたもので、これまでは欧米のユーザーを狙ったものが多くを占めていた。ところが最近は、南米のユーザーを狙ったものも目立っており、2月に国内サイトに設置されてた事例では、先にあげたブラデスコ銀行(Bradesco)のほか、イタウ銀行が2件、ブラジル銀行が1件、ブラジル最大の航空会社、TAM航空の偽サイトが1件見つかっている。
■不正アクセス禁止法改正案が国会へ
昨年から多発している国内の銀行を狙ったフィッシングが、2月も観測された。不正送金や現金の引き出しに関わった中国籍の容疑者が、これまでに何人か逮捕されているが、フィッシングやウイルスを仕掛けている黒幕は、いまだ健在のようだ。
フィッシングなどの多発を受けて、不正アクセス禁止法改正案(不正アクセス行為の禁止等に関する法律の一部を改正する法律案)が、2月21日に国会に提出された。3月23日には衆議院を通過し、29日に参議院の審査が終了。まもなく審議を終えて可決される見込みだ。
改正案では、法定刑が現行の「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」が「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げられるほか、他人のID/パスワードを不正に取得する行為などの禁止が盛り込まれている。不正アクセスを目的としたID/パスワードの取得や保管は処罰の対象となり、フィッシングサイトの開設やフィッシングメールの送信については、ID/パスワードの取得に至らなくても、不正に要求する行為として禁止される。また、不正アクセス助長行為として規制されていた、ID/パスワードの提供については範囲が拡張され、特定のアクセス先の情報はもとより、アクセス先が不特定の場合も対象となる。
(2012/03/30 ネットセキュリティニュース)
【関連URL】
・2012/2 フィッシング報告状況(フィッシング対策協議会)
http://www.antiphishing.jp/report/monthly/201202.html
・国会提出法案(警察庁)
http://www.npa.go.jp/syokanhourei/kokkai/index.htm
・審議経過情報(衆議院)
http://www.shugiin.go.jp/itdb_gian.nsf/html/gian/keika/1DB087A.htm