情報処理推進機構セキュリティセンター(IPA/ISEC)は2日、2009年3月と第1四半期(1月~3月)のコンピュータウイルス、不正アクセスの届出状況のまとめを発表した。「今月の呼びかけ」では、ワンクリック不正請求の新たな手口を紹介し、注意をうながしている。
■コンピュータウイルス、不正アクセスの届出状況
・2008年3月
3月のウイルスの検出数は約11万9000個で、2月(約12万8000個)から7.7%減。届出件数は1674件で、2月(1463件)から14.4%増となった。検出数の1位は、W32/Netsky(約10万5000個)で、2位はW32/Mytob(約5000個)、3位はW32/Mydoom(約3000個)
不正アクセスの届出件数は20件で、そのうち被害があったものは13件。被害内容は、「侵入」4件、「不正プログラム埋め込み」9件。「侵入」による被害は、SQLインジェクション攻撃を受け、サーバ上でコマンド実行されたものが1件、他サイト攻撃の踏み台として悪用されたものが2件、ウェブサーバ内のコンテンツデータが消去されたものが1件だった。
3月の相談件数は1406件で2月(1051件)を上回った。相談内容では「ワンクリック不正請求」関連が503件(2月は355件)で、再び増加傾向にある。「セキュリティ対策ソフトの押し売り」関連は3件、Winny関連は6件、「情報詐取を目的として特定の組織に送られる不審なメール」に関するものが1件あった。
・第1四半期(1月~3月)
2009年第1四半期(1月~3月)のまとめでは、ウイルスの届出件数が4997件、ウイルスの検出数が約41万個で減少傾向をたどっている。一方、不正アクセスの届出件数は39件となり、前四半期(2008年10~12月)の45件から減少し、被害にあった件数も26件で、前四半期(31件)より減少した。
■ワンクリック不正請求の新たな手口に注意
IPAに寄せられる「ワンクリック不正請求」に関する相談件数は、2008年9月の651件をピークに一時激減したが、その後再び増加傾向にある。IPAは、「増加した要因のひとつとして、新たな手口を利用するサイトが複数現れたことが挙げられる」として、「今月の呼びかけ」でワンクリック不正請求について注意を呼びかけている。
・従来の手口と新たな手口 IPAによると、ワンクリック不正請求の新たな手口が現れたのは今年2月頃。従来の手口は、ユーザーが不正請求を行うサイトにアクセスしボタンをクリックすると、悪意のあるブログラム(EXE)がダウンロード、インストールされ、パソコン画面上に料金の請求画面が表示されたままになるというものだった。この場合、インストールされたプログラムを削除することで対処できる。
新たな手口は、ユーザーが不正請求を行うサイトにアクセスしボタンをクリックすると、悪意のあるHTMLベースのプログラム(HTA)がダウンロードされ、パソコンの設定が改ざんされる。設定が改ざんされると、パソコン起動時にインターネット上のアダルトサイトに勝手に接続し、請求画面を表示する。この手口でWebブラウザに表示された請求画面は、右上の「×」ボタンで閉じたり、画面の端に移動するといった操作ができない仕掛けになっていて、表示を止めることができない。
・被害防止策--安易に「実行」ボタンを押さない IPAは、ワンクリック不正請求の被害にあわないためには、Windowsの機能である「ファイルのダウンロード-セキュリティの警告」画面に表示された内容をよく読み、安易に「実行」ボタンを押さないよう注意を呼びかけている。
セキュリティの警告画面は、悪意がある可能性のあるプログラムをパソコンに取り込もうとしていることを警告するもので、画像や動画を再生する場合には表示されない。信頼できないサイトを閲覧しているときにこの画面が表示されたら「キャンセル」ボタンを押して引き返し、悪意のあるプログラムを取り込まないようにする。
またIPAは、悪意のあるプログラムではないと判断できた場合も、ダウンロードする際は「保存」ボタンを選択してダウンロードし、ウイルススキャンをしてからインストールを実行するように勧めている。
・新たな手口で被害にあい、請求画面が消えない場合 パソコン画面上に請求画面が表示されたままになる症状が出てしまったは、改ざんされた設定を解除する必要がある。そのためには、Windowsのシステム構成の問題を診断、修復するためのソフトウェア「システム構成ユーティリティ」(msconfig)を利用して、追加されたスタートアップ項目を解除する方法がある。また、WindowsXP/Vistaにはシステムの復元機能があるので、この機能を利用し料金請求画面が表示される前の状態に復元する方法もある。
完全に設定情報を元に戻すためには、レジストリを編集する必要があるが、誤った編集を行うと必要なプログラムが起動しなくなる危険性があるので、専門的な知識のないユーザーにはお勧めできない。
IPAは、窓口を設けて電話対応しており、対処方法が分からない場合は同機構に連絡するよう呼びかけている。
(2009/04/09 ネットセキュリティニュース)
■コンピュータウイルス・不正アクセスの届出状況[3月分および第1四半期]について(IPA/ISEC)
http://www.ipa.go.jp/security/txt/2009/04outline.html