1月は、オンラインバンキングのアカウント情報を狙った攻撃が、ウイルスを使う手口に移行した関係からか、オーソドックスなフィッシングによるものは見られなかった。しかし、定番となっている、プロバイダメールのアカウントやクレジットカード情報をだまし取るフィッシングは継続していた。久しぶりにオンラインゲームのアカウント情報を狙ったフィッシングも行われた。
編集部では、飛来するメールやWeb上の情報を元に、日本国内に関係するフィッシングサイト(国内IP、JPドメイン、国内ブランド、日本語サイト)について観測を行っている。1月に観測した国内関連のフィッシングサイトは、前月までの減少傾向から一転し、22件増加の50件だった。うち、偽サイト本体が設置されていたものは40件、他所に設置した偽サイトにリダイレクトする中継サイトとして使われたものは10件だった。
悪用されたサーバーは、不正アクセスを受けた一般のWebサイトとみられるものが、前月の17件から40件(国内サーバー29件)へと大幅に増え、増加の要因となっている。ホスティングサービスの悪用は、前月から4件減の7件(国内サーバー5件)、ウイルスに感染したユーザーのパソコンや自宅サーバーとみられるものは、3件(すべて国内)だった。
悪用されたブランドは、PayPal(21件)、三菱東京UFJ銀行(5件)、RHB Bank(3件)ほか、計19種類。国内ブランドや国内のユーザーを狙ったものは、三菱東京UFJ銀行が5件、PayPalが2件(先の21件にも含まれる)のほか、MasterCard、OCN、NEXON、PlayOnlineが各1件ずつ見つかった。
これらを含め各所からは、フィッシングに関する以下のような注意喚起(更新情報を含む)が出された。
・[01/07] クレジットカード情報を盗み取ろうとする不審な電子メールにご注意ください。(三菱東京UFJ銀行)
http://www.bk.mufg.jp/info/phishing/20130107.html
・[01/08] 三菱東京UFJ銀行をかたるフィッシング(フィッシング対策協議会)
http://www.antiphishing.jp/news/alert/mufg20130108.html
・[01/10] PayPalをかたるフィッシング(フィッシング対策協議会)
https://www.antiphishing.jp/news/alert/paypal20130110.html
・[01/11] フィッシング詐欺にご注意ください(PlayOnline.com)
http://www.playonline.com/ff11/polnews/news21852.shtml
・[01/27] OCNを騙る不正なフィッシングサイトにご注意ください(OCN)
http://www.ocn.ne.jp/info/announce/2011/08/24_1.html
・[01/29] 本日(1/29)、三菱東京UFJ銀行(MUFG)をかたるフィッシングの報告を多数いただいております。(フィッシング対策協議会)
https://twitter.com/antiphishing_jp/status/296118065605775360
■クレジットカード情報をだまし取るフィッシング
1月には、「三菱東京UFJ銀行」と「PayPal」をかたり、国内ユーザーからクレジットカード情報をだましとろうとするフィッシングが観測された。
どちらもHTML形式のよく似たフィッシングメールで、アカウントの確認と称してクリックさせる機械翻訳のような怪しい日本語の文面が、画像化して貼り付けられていた。画像ファイルは、外部のサイトからロードするようになっており、画像ファイルの置場には同じ画像共有サービスを使用。クリックすると中継サイトを経由して偽サイトへと誘導される点や、悪用されたこれらサイトが、不正アクセスを受けたと見られる一般のWebサイトである点もよく似ている。
三菱東京UFJ銀行の偽サイトは、「三菱東京UFJダイレクト」のログインページをベースに作られており、本物のページの契約者番号とパスワードの入力欄の部分を、英文表記のクレジットカード情報の入力欄に置きかえた、いかにも怪しい作り。このフィッシングは、2月に入ってからも行われているので、引き続き警戒していただきたい。
PayPalの偽サイトは、米PayPalのホームページをベースとしたもので、日本語化はされていない。同じ作りの偽サイトが海外のフィッシングで多用されており、フィッシング構築キットのひとつをそのまま使用したものと見られる。
フィッシング対策協議会の情報には、偽サイトのトップページしか掲載されていないため、一見アカウント情報の詐取に見えるかもしれない。ところが最近は、それだけで終わるPayPalのフィッシングは稀だ。今回のものもそうだが、たいていは、偽のログインに続きクレジットカード情報の入力を求めてくる。
ちなみにPayPalをかたるフィッシングは、世界的には毎日桁違いに多く発生しており、国内のサーバーが悪用される事例でも最多だが、今回のような日本国内のユーザーに標的を絞った攻撃例は少ない。
なお1月には、これらのほかにMasterCardをかたるフィッシングサイトが1件(同一サイト内に5セット設置)観測されているが、これは前月の攻撃に使われた偽サイトの残骸と見られる。
■オンラインゲームのアカウントを狙うフィッシング
1月は、オンラインバンキングのアカウント情報を狙う攻撃が、再びウイルスを使った手口に移行したようだが、オンラインゲームもまた、フィッシングとウイルスの両方からの攻撃に絶えずさらされている。特にゲーム内のキャラクターやアイテムを奪い、換金しようと企んでいる攻撃者たちは、オンラインバンキングと同様、さまざまな手を使いユーザーをしつこく狙い続けている。
1月に登場したPlayOnlineのフィッシングは、スクウェアエニックスのオンラインゲーム「ファイナルファンタジーXI」公式サイトのコミュニティの偽ログインページ(英語版)に誘導し、ID/パスワードを入力させようとするものだった。攻撃者は、ふだんはもっぱら海外のオンラインゲームを標的とした活動を続けているグループだが、ときおり国内の人気ゲームも標的にする。誘導方法は未確認だが、スクウェアエニックスの発表によると、規約違反や課金の問題についてログインして問い合わせるようにといった内容のメールが送られていたという。
NEXONのフィッシングは、ゲーム関連の複数の掲示板に書き込まれた、同社のキャンペーンに便乗した書き込みから、実在するRMT業者(ゲームアイテム等の売買業者)のサイトをベースにした偽サイトへと誘導する。そこで、IDとパスワードを入力させようとする。書き込みもサイトも日本語仕様だ。
香港のサーバーを使って開設されたこの偽サイトは、その後公式サイトを模した偽サイトに改装した後、活動を休止している。サイト自体は、今もなおアクティブな状態だ。掲示板の書き込みから誘導する同じような手口で、ウイルスをダウンロードさせようとしていたこともあるので、予断を許さない。
カスペルスキーが今月掲載した下記のリリースには、ゲーマーを狙った攻撃が世界中で大規模に行われている様子が報告されている。
・アンフェアなプレイ:サイバー犯罪者が仕掛ける「ゲーム利用者向けサイト」(カスペルスキー)
http://www.kaspersky.co.jp/news?id=207585719
(2013/02/26 ネットセキュリティニュース)